4:くろひ/DAI
2016/02/29(月) 20:53:13.30 ID:XFAvTUJR0
ほあ……」
中に入ると、すでに女性の姿は見えなくなっていた。特別その女性の歩きが早かったのではない。
天海が一歩一歩、
「すごい! あれもすごい!」
と、その洋館で目移りしていたからである。
外観からして分かっていたが、内装もやはりそう。真っ赤な絨毯じゅうたんが広々と敷かれ、全ての壁が絵画になるような勢いで。下も横もそんな状態なら、見上げれば入るは光光光。今にも落ちてしまうのではというほどのシャンデリアが飛び込んでくる。どこを見たって、とてもとてもプライスレスの宝庫となっているのだ。
「よーうこそいらっしゃいました! あなた様が最後のプレイヤーとなります。こちらの席にお座りください」
そんな彼女に、ニヤリと笑ったピエロのような仮面をつけた、長身の男が近づいてくる。そして、ビシッと決めたスーツに蝶ネクタイを締め直しながら、彼女にそう告げた。
「あ、はい……。失礼します」
天海がたどり着いたその場所には、すでに数名のプレイヤーが縦長のテーブルに座っていた。
この洋館のロビーか食堂かであろう空間は、10名程度が座れそうな長テーブルがいくつも並べられている。壁には、やはりプライスレスばかりが飾られていた。
しかし、すでにいるプレイヤーは1箇所に固まっているのだ。これだけ広い会場であるのに、あまりに贅沢な使い方だ。恐らく他のプレイヤーも、先ほどの不気味仮面にそこに座るように促されたのだろう。
「……あ?」
天海が席に座ろうとイスの横を通ると、わずかに手が、隣に座る男に触れてしまった。
背もたれが壊れんばかりに体重をかけ、今すぐ飛び出しそうなほど足をテーブルの上に投げ出した男。そんなイカつい顔を持つメンズをメディアが取り上げるとすれば、イカメンという単語がたちまち世間に広がるだろう。
「ひ……す、すいません!」
反対側からイスに座った天海は、彼と目を合わせないことを硬く誓った。
そして、代わりに他プレイヤーを見やる。すると最初に目が合ったのは、天海の反対側の隣にいる、
「……あ……ど、ど、どうも……」
先ほどの男とは対照的な、少し目があっただけでそうおどおどと返す男性。
スーツを着てビシッと、と行きたいところだが、黒縁メガネから覗く目線はくたびれている。それに合わせてか、スーツもやはりくたびれていた。ペットは飼い主に似ると言うが、着るものさえもそうなのか。
「どうも……」
軽く会釈を返した天海は、すぐにそのくたびれスーツの胸元に目線が行く。そこには、Eと書かれたバッチが付けられていた。
同時に天海は、全員の前にひとつずつ封筒が置かれていることに気づく。中には、バッチと紙が何枚か入っているようだ。恐らく、他のプレイヤーも同様なのだろう。
そして、“Dか。付けておかないといけないのかな”と考えるが先か、隣のくたびれに習い胸元に装着した。
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