過去ログ - 俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』
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[sage]
2017/01/09(月) 23:24:30.57 ID:kXa9aNQe0
由比ヶ浜はそんな三浦の後姿を見ながら、すぐに後を追うべきかどうか躊躇っていたようだが、その視線をおずおずと俺に向けた。
言葉にこそ何も出さないが、その揺れ動く瞳を見れば何を問うているのかは一目瞭然だ。
八幡「 …… 追わなくていいのか?」
俺は由比ヶ浜の視線を受け止めることができず、代わりに葉山に低く訊ねる。
葉山「追ったところで、何ができるって言うんだい?」
返ってきたのは冷たく、そっけないとさえ思えるような返事。
自嘲さえ含んだその乾いた声が、俺の耳にはまるでどこか他人事でもあるかのように虚ろに響いて聴こえた。
葉山「優しい言葉が却って相手を深く傷つけてしまうことだってある。同情や憐憫が相手を余計に惨めすることだってある」
まるで独り言のように訥々と言葉を連ねる。
葉山「そうだろう? 違うか? 比企谷?」
静かだが、まるで八つ当たりのようなその口調に、込められた苛立ちと遣り切れなさが切々と伝わって来た。
結衣「 …… でもだからって」
八幡「 …… よせ、由比ヶ浜」
堪りかねて何か言い募ろうとした由比ヶ浜を静かに遮る。
別に葉山を庇い立てするつもりはない。ただ単に、うちひしがれた今の葉山をこれ以上追いつめるような真似はしたくはないし、させたくもなかった。
結衣「 …… そんなのって、酷いよ」
ぽしょりとひとつ切なげな言葉を残し、由比ヶ浜は三浦の後を追うようにして階下に駆けていく。
やがて海老名さんも小さく溜息をひとつ吐くと俺に一瞥をくれ、だが何も言わずにそのままゆっくりとその場を後にした。
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