9:名無しNIPPER
2016/03/12(土) 04:11:47.80 ID:mEcRfjijo
「……来ちゃった」
何をする気にもなれず街をぶらぶらしていると、自然と足が向かってしまった。
『Spell on you』。まじないをかける、転じて、魔法をかける。店名はそういう風になっていた。
一つ深呼吸。古びた木製のドアを押せばギッと重い音が響く。
カランコロン、とベルがなる。
「いらっしゃい。……ああ、あなたでしたか」
「ど、どうも」
老人は店の奥から出てきた。人の良さそうな笑みを浮かべ、ことりを招き入れる。
幾つかのマネキンとたくさんの布の前を通り過ぎる。耳を済ませればミシンの音が聴こえてきそうだった。
「申し訳ありません。私の教え子が、無礼を働いたようで」
「……教え子?」
「ええ。あの講師です」
「そ、そうなんですか」
衝撃だ。こんな人に教わってあんな風になることが。
「まぁ、悪い奴ではないのだけはわかってやってください。何分、不器用な奴ですので」
「は、はぁ……」
「それで、話は聞かせていただきました。あなたは、ファッションデザイナーを目指している、ということでしたが」
「一応、はい」
「端的に申し上げますと、あなたにその才能がない、というのは間違いありません。ですが」
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