過去ログ - ゆき「亜人?」
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446: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/20(水) 23:59:17.84 ID:uByMCkSUO


『わたしたち、先に避難してるね』


人影が煙のなかに浮かんでいた。その人影は、案内人かなにかのように悠里たちのさきを歩いていく。


悠里 (待って……)


苦しさのあまり、歩くのもつらそうな由紀の腕を肩にまわし、悠里は人影を追っていく。案内人めいた人影は、煤けた煙を意に介することなく、平然と歩いていった。


悠里 (待って……)


悠里は、すがるように手をのばす。それでも、その人影は歩みをとめない。

悠里は歩き続けた。そのあいだ、人影を見失わないように、手を前にのばしつづける。気づけば、人影は歩くのをやめていた。悠里の意識は朦朧としていたから、人影が立ち止まっていることにはすぐには気がつかなかった。彼女がそれに気づいたのは、それまで背中しか見せていなかった人影がこちらを振り向いて、悠里たちに顔を向けてからだった。


悠里 (あ……)


なつかしい面影に悠里の指が触れそうになる。


トン...


悠里 (ここって……)


悠里の指にあたったのは、地下避難区域に続く入口のシャッターだった。学習机がはさまれてできた隙間をくぐり、悠里と由紀は地下へと降りていく。

ふらつく足で慎重に階段をおりる。煙が届かないところまでおりたとき、悠里は由紀を階段に座らせた。


悠里「シャッター閉めないと煙がくるわね。すぐ戻るわ」


由紀は息をあえがせながら、なんとか悠里にうなずいた。悠里が去っていくと、緊張の切れた由紀の全身に疲労が襲ってきた。由紀は目を閉じた。


由紀「ありがと、めぐねえ……」


そのひと言だけ呟いた由紀は、あっという間に眠りに落ちてしまった。


『安全なところに避難して、またあとで会おうね!』


校舎中のスピーカーから由紀の声が流れてきた。その声は、駐車場のすぐ側にあるスピーカーからも響き、その音の振動がいまも昇る黒煙の筋をかすかに揺らした。

ーー
ーー
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