445: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/20(水) 23:58:12.91 ID:uByMCkSUO
ーー三階
校舎のなかに煙が充満しつつあった。放送室をあとにした悠里と由紀は、顔の下半分をハンカチで覆い、煙を吸い込まないようにしていた。だが、荒れ果てた校舎の窓から侵入し放題の煙は、容赦なく彼女たちの喉を攻め立てた。
由紀「げほっ……げほっ……」
悠里「!」バッ!
悠里はとっさに咳き込んだ由紀の口元に手を伸ばした。煙にまぎれて、“かれら”も校舎に侵入してきたからだ。呼吸すらままならいなか、二人は声を潜めて階段を降りていった。
一階に降りた悠里は、慎重に壁から廊下の様子を確認する。視界が不十分でも、一階廊下にゆらめく二体の“かれら”の影は見えた。悠里は、明光するサイリウムを転がし、“かれら”を廊下から遠ざけようとする。サイリウムは煙のなかでよく発光し、いつも以上に効果を発揮した。
“かれら”の姿がきえたことを確認した悠里は、由紀の手をとり、避難を再開する。
悠里 (はやく……いかなきゃ……)
悠里 (でも、どこ……どこ……?)
『訓練火災でーす』
スマートフォンに録音された由紀の音声が放送室のマイクを通じて、学校全体に響き渡る。
『訓練火災でーす』
悠里「……いそがっ」
ガシィッ
急ごうとする悠里の服の袖を、由紀が掴んだ。
『くるみちゃん、みーくん、聞こえる?』
由紀「……っ……あっち……」フル...フル...
震える手で廊下の奥を指差す。煙が目にしみるなか、悠里は由紀が示した方向に目を凝らした。
悠里「え……だれ……?」
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