452: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:33:54.49 ID:nHMOffOiO
それをきっかけに、胡桃にむかっていた“かれら”は一斉に黒い幽霊のほうを向いた。“かれら”にできたのは、それだけだった。黒い幽霊に対して、“かれら”は悲しくなるほど無力だった。
幽霊は鉄板の柄を両手で握った。ゆっくりと持ち上がる鉄板が、十メートルにもわたる異様な長さを見せたとき、胡桃はその鉄板がなんなのかわかった。それは、墜落したヘリコプターのメインローターだった。
幽霊の右手はメインローターのブレード部分を握っていた。金属製のブレードに爪が食い込み、なにがあっても放しそうにない。幽霊はメインローターを、胡桃がそうしているように胸のところで構えていた。ちがいがあったのは、刃にあたる部分が横に異様に長いことだった。胡桃のシャベルの刃よりはるかに長いブレード部分が、駐車場のフェンスからはみ出していた。
黒い幽霊がメインローターを持ち上げてから構えるまでの動作は、その重量にふさわしい緩慢なものだった。だが、幽霊の足が一歩踏み込まれたあとの動作、“かれら”を一掃するためになされた動作は、鉄の風そのものだった。
コマ落としのように、“かれら”の首から上が一瞬で消え去った。ブレードは研がれていたわけではないので、“かれら”の首は遠心力と質量でぶちぶち千切られた。首の無い死体が、駐車場のあちこちで倒れてく。胡桃は膝を曲げ中腰の姿勢でいたため、メインローター・ブレードによる横薙ぎの一閃を回避できた。駐車場にいる“かれら”のほとんどが首をなくしてしまっていた。学校側のフェンスの近くに植えられた木の先が地面に落ちる。黒い幽霊による右から左への薙ぎ払いは、駐車場近くの木の先端も切り落としていた。
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