487: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/10(水) 23:07:50.58 ID:xQt0KHc3O
戸惑う由紀に、悠里は自分の心情を吐露し始めた。
悠里「外に行くのがこわくて仕方ないの。助けに行かなきゃいけないのに、身体が動かないの」
由紀「……」
悠里「どうしようもないの。わたしは、くるみや美紀さんみたいにすぐに動けない。ゆきちゃんみたいに人を元気させられない。永井君とちがって、すぐにあきらめちゃうの」
そこまでしゃべったところで、悠里の感情の堰が切れた。それまではまだ平静さを残していた声に嗚咽が混じりだし、瞳から涙がとめどなく溢れ出した。
悠里「ごめんなさい……ごめんなさい……わたしが、こんなんじゃ……」グズッ...ヒック...
由紀は泣きじゃくる悠里にそっとを手を伸ばすと、髪を撫で、悠里をやさしく胸元に抱きよせた。
悠里「ごめん、なさい……」ヒック...ヒック...
由紀「だいじょうぶだよ。だいじょうぶだから、ね?」
由紀は、悠里が泣きつかれるまでずっと彼女の背中に手をあて、だいじょうぶ、と唱え続けた。悠里が由紀の膝の上で寝息を立て始めると、由紀は慎重に悠里の頭の下にタオルを敷いてその場から離れる。倉庫のなかから、記憶を頼りにチョコレートとスポーツドリンクを探し出し、メモとともに悠里の枕元に置く。
一階のシャッターへとつづく階段の前に立った由紀は、リュックを背負い、バットを手に持ち、頭に巻いたハチマキの左右にサイリウムを差し込んでいた。愛用のニット帽をかぶっていないせいか、その表情はいつもより凛々しく見える。
階段に足をかけたとき、彼女を呼び止める声が由紀の耳に届いた。
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