514: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:14:08.49 ID:jS9uIrpkO
−−翌日・屋上
胡桃は手すりに背中を預けながら、屋上に腰をおろし空を見上げていた。この季節、あと数時間もすれば、薄く広がる雲と空色のコントラストが、だんだんと強まる日差しの光量の強い白色に消えてゆくだろう。だがいまはまだ、青い空に浮かぶ雲のゆくえを気ままに堪能できる時間帯だった。綿菓子を思わせるふくらみのある巨大な雲が、上空で乱れる大気のせいで、空に横たわる一本の河のように形を変えた。
永井「おい」
心ここに在らずといった風情で空を眺めていたいた胡桃は、突然声をかけられびっくりして肩を跳ねさせた。声の主が永井であることを確認した胡桃は、どこかほっとしたように見えた。自分の心のなかに頓着しない相手は、この学校では永井だけだった。
胡桃「なんだ、永井か」
永井「昨日、回収できたものは?」
胡桃「そのポーチのなか」
永井は胡桃の横に置いてあるポーチを手に取って、その中身を確認した。中身はいま永井が腰につけているものとほぼ同様だったが、三本の注射器だけがちがっていた。永井は拳銃を取り出すと、薬室と弾倉を確認し残弾を調べた。そして、ハンマーを戻しセーフティをかけると、拳銃を胡桃に差し出した。
胡桃「いらねーよ。銃とかこわいし」
永井「そうか」
永井は拳銃をポーチにもどした。やや間があってから、胡桃が聞いた。
胡桃「拳銃の使い方、知ってんの?」
永井「あの隊員が使ってるところを見たからな」
胡桃「見ただけで使い方分かるのかよ」
永井「昔から見たものは憶えられたし、動作なら再現もできた」
胡桃「すげえな」
また間があいた。先ほどよりも早いタイミングで、今度は永井が口を開いた。
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