過去ログ - ゆき「亜人?」
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565: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/23(金) 23:00:32.93 ID:m50+y+cIO

琴吹武は、このような隙間だらけの建物に腰を下ろしたのはいつぶりだろうと感慨にふけっていた。琴吹がいるのは、建築途中のマンションの十五階にあたる場所で、いかなる壁も窓も存在していなかった。コンクリートの柱と各階層の基盤となる床、というか平べったいコンクリートの塊といったほうがその実に近い、外から見れば立体駐車場みたいな建物だった。

いま琴吹がいる場所の右手にあるのは、一時間ほどまえに西日が差し込んできた、映画館のスクリーンのような、長方形に切り取られたガラスもなにもない、窓代わりの開いた空間だった。横七・〇五メートル縦三メートルの大きさで、この横縦比率二・三五:一は、シネマスコープと呼ばれるスクリーンサイズと同じ比率だった。この大画面から見えるものは、どこにでもあるありふれた街の風景でしかなかったが、一時間前に夕日で一面赤く染まった街並みを見下ろしたときは気分がよかった。その風景を見たとき、琴吹はむかしテレビで観た『風櫃の少年』という映画に、ちょうどこれと同じようなシーンがあったことをふと思い出していた(しかし、『風櫃の少年』のアスペクト比は一:一・八五のアメリカンビスタだ)。

目の前では、海斗がインスタントラーメンを作っていた。底の深い鍋に沸騰したお湯がぐつぐつ煮えていて、黄色っぽい乾燥麺がふたつ、湯がかれほぐれていた。海斗は鍋に粉末スープの素を入れた。二人分なので二袋。砂時計の砂のように一定の速度で粉末を落とし、ダマにならいよう箸でかき混ぜていく。粉末が溶け、鍋から味噌の匂いがたった。海斗はインスタントラーメンを器に取り分け、一つを琴吹に渡した。海斗は自分の分を器に入れると、すぐには食べず、アウトドア用のコンロの上にケトルを乗せてから麺をすすった。しばらくして湯が沸くと、海斗はコーヒーを作った。


琴吹「ラーメンにコーヒーって合うのか?」

海斗「口の中にいっしょにいれなきゃいい」



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