過去ログ - ゆき「亜人?」
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572: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/23(金) 23:17:13.15 ID:m50+y+cIO

その建物は堅牢さではシェルターと呼ぶにふさわしい立方型の建物で、シャッターを閉めきれば地面と接する四方の壁に建物への入り口はなく、梯子を使って屋上から中に入らなければならなかった。

屋上には銀行の金庫室の扉を思わせる丸い入り口があり、そこについているハンドルが内側から回され、軋んだ音を立てた。中から一人の男が出てきた。男は昼休憩に出てきたといった風情で外の空気を吸った。タバコを取り出し口に一本咥え、ライターで火を付け、深々と吸う。鈍い光が降り注ぐ冬の朝みたいに、男は白い煙をばーっと吐き出した。タバコの煙は上空に向かって真っ直ぐ消えていった。

男は頭をからっぽにしてタバコを吸う以外の何の動作もしないでいると、白く立ち昇る煙の向こうに、黒い狼煙のようなものが上に伸びているのが見えた。男が狼煙の方へ近寄ってみると、予想した通り黒い幽霊がいた。黒い幽霊の頭部は、上から見下ろすとハンチング帽のように見えた。

男が幽霊から視線を外すと、“かれら”が一体、迷い込んだみたいに建物の前にいるのがわかった。その死んだ迷子は黒い粒子の狼煙を目印にやって来たようで、直立不動の姿勢のままでいる幽霊にのそのそと近づいていく。男は迷子のゆっくりとした接近をじっと見守っていた。迷子の死者は、幽霊に一メートルほどの距離まで迫っていた。一歩踏み出し、死者は歯を剥いた。どこでもいいから幽霊の身体に噛みつこうとしていた。


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