過去ログ - ヴェロニカは一撃で死ぬことにした
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13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:45:00.68 ID:0aWAafos0
ヴェロニカじゃあなくっても、あのお医者様の所に行く人はみんな、重苦しいため息をつくんだよ。
名医なのは間違いないけど、この町の人は誰も行きたがらないんだ。
何故かって?病院のドアをくぐればわかるさ。
14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:47:41.41 ID:0aWAafos0
「おおー、ヴェロニーカー。あなた、まーた、ららら、自殺なんてしましたーねー」
ヴェロニカの耳に大音量のオペラなんかが聞こえてくる。
何を隠そうこの歌声の主こそが、この町のお医者様なんだ。
15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:50:35.57 ID:0aWAafos0
「先生、先生、聞いて下さい。わたし、銃で頭を撃っても、ぴんぴんしているんです。げほん」
「じゅうーなんて、あなた、ららららー、何処でそんな、危険なもーのーをー」
「げほん、ごほん、ギャングのタップ親分です。ほら、げほごほ、タップダンスが大好きな」
16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:53:03.97 ID:0aWAafos0
死ねないヴェロニカにとってはそんなの、危険でもなんでもないんだな。
彼女はどうどうと事務所までいって、にらみつける親分の前でひとつ、タップダンスを踊ってみせた。
それはそれは綺麗なもんさ。子分どもが銃を突きつけてるっていうのに、ヴェロニカはタンタントトンと一曲、華麗にダンスを踊ってみせた。
それを見たタップダンス好きの親分は、びっくりするくらいの満面の笑みさ。
17: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:55:25.99 ID:0aWAafos0
「なんてえ踊りだ。おれは産まれてこのかた、こんな踊りは見たことねえ。お嬢ちゃん、お前、ただもんじゃあないな」
そんなことをニコニコと、孫娘に話しかけるみたいにヴェロニカに言う。
子分はすっかりあきれ顔さ。こうなっちゃった親分は、もう誰にも止められないって、彼らはよーく知ってるんだから。
18: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:57:14.40 ID:0aWAafos0
「頭をずどんって撃ったんです。げほげほ、中身を全部まきちらすつもりで。けどそれから、どうにもせきが止まらなくって。えへん」
「それはいけませーんねー。たらら、おおー、ではすこし、見てみましょーうかー。わおおー」
といって、金属のヘラをヴェロニカの口に入れる訳だけど、歌うたびにヘラがぶるぶる揺れるから、どんな怪我でも治るヴェロニカでも、さすがにひやっとしちゃったよ。
19: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:58:49.30 ID:0aWAafos0
「吹き飛ばした脳のかけらが、らら、器官に入ったようですね。うーらー、このお薬で、ほおお、うがいをしてください、ふわわー」
がらがら、ぺっ。がらがら、ぺっ。何度か薬を吐き出すと、のどのあたりがスッキリとして、ヴェロニカのせきは綺麗サッパリ止まってしまった。
歌をうたわなければ素晴らしい先生なのにな、と、ヴェロニカはつい失礼な事を考えたね。
20: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 15:00:10.96 ID:0aWAafos0
「ありがとうございます、先生。すっかり良くなりました」
「これにこりたら、ふううー、もう自殺なんて、やめることですね。うおおー ……」
お医者様はマイナー調でヴェロニカに言う。
21: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 15:02:31.97 ID:0aWAafos0
その日、ヴェロニカと、ヴェロニカのおとうさんと、ヴェロニカのおかあさんは、車に乗ってた訳なんだけど。
小さなヴェロニカが、大きなお魚を見たいって言ったもんだから。
4人乗りの小さな車で、大きな海の近くにある、小さな水族館まで。
ひとっ走り行く所だったんだけど。
22: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 15:04:26.45 ID:0aWAafos0
ヴェロニカのおとうさんとおかあさんは、車と一緒にグシャグシャになったのに、ヴェロニカは傷一つなくピンピンしていた。
いや、本当はヴェロニカもグシャグシャになったんだけど。
ヴェロニカは元通りに治ってしまったんだ。二人は目の前で死んだってのに。
二人のグシャグシャを見つめながら、ヴェロニカの傷はどんどん治っていったんだ。
23: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 15:06:01.36 ID:0aWAafos0
それからヴェロニカの自殺グセは始まった。
家族を失ったヴェロニカは、家族のもとへ行こうとしたんだ。
死ねない身体を呪いながら、彼女は自殺を行ったんだ。
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