過去ログ - ヴェロニカは一撃で死ぬことにした
↓ 1- 覧 板 20
6: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:29:43.58 ID:0aWAafos0
けれど、よーく見てほしいんだ。ほら……死んだはずのヴェロニカを。彼女の頭の所をごらん。
シュウシュウと白いケムリが出ているだろう?
ボコボコっていう音も聞こえるはずだ。
見間違いなんかじゃあない。空耳なんかでもないんだ。ほら、目をこすっている場合じゃないよ。
7: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:32:22.43 ID:0aWAafos0
君が見間違いかと思って目をゴシゴシしている間に、無くなったはずのヴェロニカの頭は、どんどんぼこぼこ増えていった。
君が聞き間違いかと思って耳の穴をグリグリしている間に、ヴェロニカのくりくりしたピンク色の巻き毛が、つるつるの頭からズルズル伸びていった。
そして、君がびっくりして目をパチパチしている間に、ヴェロニカはどんよりした目を開いた訳だ。
8: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:34:38.03 ID:0aWAafos0
口からは大きな大きなため息がもれる。先程までの明るい顔がウソのようさ。
ヴェロニカは周囲をゆっくり見渡し、ここが天国じゃあなく、地獄でもなく、自分の住んでる汚いちいさなアパートの一室だって事を改めて認識して、こうつぶやく訳だ。
「ああ……また死ねなかった」
9: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:36:23.69 ID:0aWAafos0
……どうして死んだはずの彼女が、またこうして生き返ったかというと、これには深い訳がある。
この世に産まれてくる人はみんな、おとうさんの思いと、おかあさんの愛と、かみさまの気まぐれを受けて産まれてくる。
それらが時として、ふかくふかく身体に染み付いて、一種のおまじないみたいなものになる事があるんだよ。
10: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:38:30.81 ID:0aWAafos0
この世界の人はみんなそうさ。たとえば三丁目のパン屋のサムさんは、パン焼きの才能がとんでもない。彼がパンを焦がした所なんて、お天道さんだって見たことがないね。
きっとサムさんのおとうさんとおかあさんは、お店を継ぐ長男として、そんな子供を願ったんだろう。
学校の先生のゴードンさんは、どんな数式でも五秒あれば解いてしまう。パソコンだって彼には白旗を振るくらいだ。
ゴードンさんのおとうさんとおかあさんは、きっと素晴らしい頭脳の持ち主が産まれるように、かみさまに手を合わせたんだね。
11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:40:41.92 ID:0aWAafos0
つまり、ヴェロニカのおとうさんとおかあさんは、こう願ってしまった訳だ。
「産まれてくる子に、どんな事があろうとも ……強く、たくましく、生きますように」
その願いが叶って、今、ヴェロニカはこうして生きてる。
12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:43:00.02 ID:0aWAafos0
さて、頭がしっかり元に戻ったヴェロニカだったけど、どうにもせきがとまらない。
げほげほ、ごほごほ、おほんおほん。
しっかり元に戻ったように思ったけれど、どうやら綺麗に治らなかったみたいだ。
13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:45:00.68 ID:0aWAafos0
ヴェロニカじゃあなくっても、あのお医者様の所に行く人はみんな、重苦しいため息をつくんだよ。
名医なのは間違いないけど、この町の人は誰も行きたがらないんだ。
何故かって?病院のドアをくぐればわかるさ。
14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:47:41.41 ID:0aWAafos0
「おおー、ヴェロニーカー。あなた、まーた、ららら、自殺なんてしましたーねー」
ヴェロニカの耳に大音量のオペラなんかが聞こえてくる。
何を隠そうこの歌声の主こそが、この町のお医者様なんだ。
15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:50:35.57 ID:0aWAafos0
「先生、先生、聞いて下さい。わたし、銃で頭を撃っても、ぴんぴんしているんです。げほん」
「じゅうーなんて、あなた、ららららー、何処でそんな、危険なもーのーをー」
「げほん、ごほん、ギャングのタップ親分です。ほら、げほごほ、タップダンスが大好きな」
16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:53:03.97 ID:0aWAafos0
死ねないヴェロニカにとってはそんなの、危険でもなんでもないんだな。
彼女はどうどうと事務所までいって、にらみつける親分の前でひとつ、タップダンスを踊ってみせた。
それはそれは綺麗なもんさ。子分どもが銃を突きつけてるっていうのに、ヴェロニカはタンタントトンと一曲、華麗にダンスを踊ってみせた。
それを見たタップダンス好きの親分は、びっくりするくらいの満面の笑みさ。
355Res/135.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。