過去ログ - ヴェロニカは一撃で死ぬことにした
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9: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:36:23.69 ID:0aWAafos0
……どうして死んだはずの彼女が、またこうして生き返ったかというと、これには深い訳がある。

この世に産まれてくる人はみんな、おとうさんの思いと、おかあさんの愛と、かみさまの気まぐれを受けて産まれてくる。
それらが時として、ふかくふかく身体に染み付いて、一種のおまじないみたいなものになる事があるんだよ。


10: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:38:30.81 ID:0aWAafos0
この世界の人はみんなそうさ。たとえば三丁目のパン屋のサムさんは、パン焼きの才能がとんでもない。彼がパンを焦がした所なんて、お天道さんだって見たことがないね。
きっとサムさんのおとうさんとおかあさんは、お店を継ぐ長男として、そんな子供を願ったんだろう。

学校の先生のゴードンさんは、どんな数式でも五秒あれば解いてしまう。パソコンだって彼には白旗を振るくらいだ。
ゴードンさんのおとうさんとおかあさんは、きっと素晴らしい頭脳の持ち主が産まれるように、かみさまに手を合わせたんだね。


11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:40:41.92 ID:0aWAafos0
つまり、ヴェロニカのおとうさんとおかあさんは、こう願ってしまった訳だ。

「産まれてくる子に、どんな事があろうとも ……強く、たくましく、生きますように」

その願いが叶って、今、ヴェロニカはこうして生きてる。
以下略



12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:43:00.02 ID:0aWAafos0
さて、頭がしっかり元に戻ったヴェロニカだったけど、どうにもせきがとまらない。

げほげほ、ごほごほ、おほんおほん。

しっかり元に戻ったように思ったけれど、どうやら綺麗に治らなかったみたいだ。
以下略



13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:45:00.68 ID:0aWAafos0
ヴェロニカじゃあなくっても、あのお医者様の所に行く人はみんな、重苦しいため息をつくんだよ。
名医なのは間違いないけど、この町の人は誰も行きたがらないんだ。

何故かって?病院のドアをくぐればわかるさ。


14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:47:41.41 ID:0aWAafos0
「おおー、ヴェロニーカー。あなた、まーた、ららら、自殺なんてしましたーねー」

ヴェロニカの耳に大音量のオペラなんかが聞こえてくる。
何を隠そうこの歌声の主こそが、この町のお医者様なんだ。

以下略



15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:50:35.57 ID:0aWAafos0
「先生、先生、聞いて下さい。わたし、銃で頭を撃っても、ぴんぴんしているんです。げほん」

「じゅうーなんて、あなた、ららららー、何処でそんな、危険なもーのーをー」

「げほん、ごほん、ギャングのタップ親分です。ほら、げほごほ、タップダンスが大好きな」
以下略



16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:53:03.97 ID:0aWAafos0
死ねないヴェロニカにとってはそんなの、危険でもなんでもないんだな。
彼女はどうどうと事務所までいって、にらみつける親分の前でひとつ、タップダンスを踊ってみせた。
それはそれは綺麗なもんさ。子分どもが銃を突きつけてるっていうのに、ヴェロニカはタンタントトンと一曲、華麗にダンスを踊ってみせた。
それを見たタップダンス好きの親分は、びっくりするくらいの満面の笑みさ。


17: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:55:25.99 ID:0aWAafos0
「なんてえ踊りだ。おれは産まれてこのかた、こんな踊りは見たことねえ。お嬢ちゃん、お前、ただもんじゃあないな」

そんなことをニコニコと、孫娘に話しかけるみたいにヴェロニカに言う。
子分はすっかりあきれ顔さ。こうなっちゃった親分は、もう誰にも止められないって、彼らはよーく知ってるんだから。

以下略



18: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:57:14.40 ID:0aWAafos0
「頭をずどんって撃ったんです。げほげほ、中身を全部まきちらすつもりで。けどそれから、どうにもせきが止まらなくって。えへん」

「それはいけませーんねー。たらら、おおー、ではすこし、見てみましょーうかー。わおおー」

といって、金属のヘラをヴェロニカの口に入れる訳だけど、歌うたびにヘラがぶるぶる揺れるから、どんな怪我でも治るヴェロニカでも、さすがにひやっとしちゃったよ。
以下略



19: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2016/03/19(土) 14:58:49.30 ID:0aWAafos0
「吹き飛ばした脳のかけらが、らら、器官に入ったようですね。うーらー、このお薬で、ほおお、うがいをしてください、ふわわー」

がらがら、ぺっ。がらがら、ぺっ。何度か薬を吐き出すと、のどのあたりがスッキリとして、ヴェロニカのせきは綺麗サッパリ止まってしまった。
歌をうたわなければ素晴らしい先生なのにな、と、ヴェロニカはつい失礼な事を考えたね。


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