過去ログ - 前川みく「ハンバーグが鳴く頃に」
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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/03/22(火) 06:42:36.27 ID:6MxfTFCf0
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 少女、神崎蘭子は絶句した。
 
 何も驚きのせいだけではない。言葉が、口の中から出てこないのだ。
 
 そして、まるでハムスターのように頬を膨らませた彼女は、
 テーブルに置かれた皿の上、血のように赤いソースのかかったハンバーグを凝視する。
 
 今、彼女の可愛らしい口の中では、肉汁溢れる塊がこれでもか! とういう勢いでその「うま味」を弾けさせており、
 その美味しさと言ったら――今まで食べてきた、どの店のハンバーグよりも遥かに勝っていた――とにかく、
 その感動を的確に表すための言葉を、彼女は咄嗟に思いつく事ができなかったのである。

「どう……美味しい……でしょ?」

 そんな蘭子の反応を見て、対面に座る白坂小梅が、嬉しそうに首をかしげた。
 それと同時に、普段は長い前髪で隠されている彼女の右目が、ずれた髪の下からちらりとその姿を覗かせる。

「ほひひぃ……び、ぶぃみにゃり!」

 それが、蘭子の精一杯。
 未だ咀嚼の終わらない彼女は再び口を閉じると、小梅の言葉に何度も頷くことで応えたのであった。


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