過去ログ - 前川みく「ハンバーグが鳴く頃に」
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25: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/03/22(火) 12:12:08.89 ID:6MxfTFCf0
今度は反対側の手に持ったフォークで、一口大にカットした肉片を、ふーふーとしっかり冷ましてから、口の中へ。
すると肉の風味が、むわっと口の中に広がって、そのまま前歯で噛み切ると、残っていた油が舌を満たす。
しっかりと火が通っているというのに、肉は柔らかく、それでいて溶けるでもなく、確かな存在感を残していて。
――美味しい。
気がつけば、あっという間にお皿は空になっていた。紙ナプキンで口を拭き、グラスに入った水に口をつける。
ほとんど同時に食べ終わっていた対面の彼女も、満足気そうに微笑んで言う。
「どうでした……美味しかったでしょう?」
だが、みくの口からは幸せなため息が漏れるだけで、意味のある言葉は出てこなかった。
まさか、こんなに美味しいハンバーグが世の中にあっただなんて。
口を開くと、この味の余韻が逃げていってしまいそうで――なるべくなら、喋りたくなかったのだ。
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