過去ログ - Iriya/Emotion into the sky
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17: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:13:50.38 ID:3u2qsoVw0
 浅羽と出会ったあの日、わたしは、入里野加奈はもう一度生まれた。

浅羽の言葉が、わたしを再びつくりあげたのだと思う。

エリカたちとはどこかが違う、異なる種類の好きな人。それが浅羽。
以下略



18: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:14:30.35 ID:3u2qsoVw0
 それからのわたしは、生死をないがしろにすることができなくなっていった。

徐々にだけれど死に対して、どうしようもない恐怖を抱き始めてしまっていた。


19: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:15:17.74 ID:3u2qsoVw0
「浅羽を死なせたくない、でもわたしも死にたくない。生きたい」

 椎名にそう話したとき、なぜだか椎名が辛そうな顔をして、視線を逸し、目を伏せた。

「そうね、私だって、伊里野と浅羽くん……ううん、違う。みんなに生きてもらいたいわ」
以下略



20: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:16:23.08 ID:3u2qsoVw0
「ねえ、伊里野は浅羽くんが好き?」

 少し恥ずかしかったけど、わたしは頷く。

「猫は?」
以下略



21: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:17:05.67 ID:3u2qsoVw0
「どうして、好きなの?」

「浅羽が、好きって言ったから」

「そっか……じゃあ猫と浅羽、ってちょっと愚問だったわね」
以下略



22: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:20:40.83 ID:3u2qsoVw0
 椎名がわたしを抱きしめる。あまりに唐突だったので、抵抗する暇さえなく、椎名の胸の内で驚くしかなかった。

「だったらさ、入里野……浅羽くんを守らなきゃね。浅羽くんを死なせちゃいけない。

ねえ、知ってる? 1番好きだって思える人に送る言葉。教えてあげるから、浅羽くんに言ってあげなよ」
以下略



23: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:21:59.11 ID:3u2qsoVw0
 長らくカメラ映像をカットしていることに対する警告音が鳴る。僅かばかりの時間粘ってはみたものの

浅羽の姿をもう1度、肉眼で捉えることができなかった。

 わたしはパネルを操作して、先ほどと真逆の指令をブラックマンタに与える。
以下略



24: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:23:07.39 ID:3u2qsoVw0
 そろそろ最後の作戦を実行しなければならない。

けど、あとひとつだけ我儘が許されるように思えたし、それを実際に止める手立てはもはや誰にも残されていない。



25: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:23:34.89 ID:3u2qsoVw0
「マイム・マイムは砂漠の踊り。ファイアストームの日、浅羽と踊った踊り」

 あの踊りを、わたしは忘れていなかった。ブラックマンタをどのように操縦したのか、忘れてはいなかった。

イエスタデイ教官が、この出鱈目なマヌーバを目にすることがあったならば、たぶん、説諭だけではすませなかったはずである。
以下略



26: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:24:34.28 ID:3u2qsoVw0
 マイム・マイムを踊りながら、少しずつ高度を上げていく。

ひょっとすれば甲板で、浅羽があの時のように、わたしと一緒に踊ってくれているかもしれない。

そう想像してみると、少しの間だけだが気持ちがふっと軽くなる。
以下略



27: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:25:05.48 ID:3u2qsoVw0
 わたしは、これから死ににいく。KAMIKAZEという名のこの作戦は、これまでで最も単純であり、技術的にも平易な作戦。

でも、平易であれば平易であるほど、その落とし前はどこかで誰かがつけなければならない。


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