過去ログ - 西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
↓ 1- 覧 板 20
22:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:29:19.06 ID:sOyMUoJv0
母が私の心臓に金槌を振り下ろしました。
私は眼の前が暗くなりました。
がくりと項垂れ、全身をわなわなと震わせることはできても、なお言葉は出ず、身体も動きません。
23:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:30:09.47 ID:sOyMUoJv0
勝利のためならば、人死にさえ厭わないと言うのか。
それではまるで戦争ではないか。
できることなら、母の言葉を否定しとうございました。
24:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:30:47.39 ID:sOyMUoJv0
そうして何もかも葬り去ったのちに、火を以って西住家を灰にしてやろうとも思いました。
無論そんなことはできようはずもなく、唖のように黙り、瞽のように何も見ていない私を、姉が連れ出してくれました。
25:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:31:22.41 ID:sOyMUoJv0
部屋で私は、ぼこられ熊を抱きしめて、固まっておりました。
声は出ず、ただ涙だけが頬を伝います。
26:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:32:29.20 ID:sOyMUoJv0
しかしこれは天の道理が起こした運命なのだと気づかされ、私はどうしようもない虚無の思いを抱えざるを得ないのです。
27:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:33:00.19 ID:sOyMUoJv0
お姉ちゃん、と声が漏れました。
痩せこけた心が絞り出した悲鳴でした。
28:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:35:01.46 ID:sOyMUoJv0
待っていたのは、武士の情けでした。
29:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:36:12.70 ID:sOyMUoJv0
「私はもう、お前の姉ではいられないよ」
30:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:36:51.53 ID:sOyMUoJv0
あとのことは、もう覚えておりません。
気づけば、私は熊本の生家から、大洗に転がり込んでおりました。
戦車から逃げ出したのに、また戦車に追い込まれるとは、思いもよらない出来事でした。
31:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:37:38.71 ID:sOyMUoJv0
今日はここまで。
またよろしくお願いします。
32:名無しNIPPER[sage]
2016/04/01(金) 22:38:58.47 ID:s16MlMbf0
期待
633Res/117.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。