10: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/04/05(火) 13:24:14.81 ID:lqZk7NNG0
「それでも、Sランクはひとつのゴールです。私の夢、トップアイドルになる夢を叶えてくれてありがとうございました!」
立ち上がって、部長さんに頭を下げる。
「俺が島村の面倒を見ていたのは最初だけだ。礼なら自分のプロデューサーに言ってやれ」
「それでも、私がデビューできたのも部長さんのおかげですから」
「まったく……」
部長さんは忌々しそうに吐き捨てると、天を仰いだ。
「十年と二ヶ月前だ。あるクソガキの入社試験をした」
「どうしたんですか? いきなり……」
「社長曰くピンと来たそうだ。当時は黒井社長のプロジェクト立ち上げに合わせて会社をつくったばかりで人手不足だった。そこに社長が話を持ってくるなら、少なくとも普通に使える奴だろう。社長の批評眼は信頼できる」
部長さんは私の言葉を無視して続けた。
「実際に面接をしてみてもそうだった。試験はそれだけだが、最後に気紛れで何枚かの写真を見せて選ばせた」
「それって……」
「最もアイドルに相応しい者を選べ……養成所に通っている新ユニットのメンバー候補だ。あの野郎、迷わず一枚の写真を手に取りやがった」
たぶん、プロデューサーさんのことだ。
部長さんは、プロデューサーさんのことになると言葉使いが悪くなる。
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