140:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:25:19.72 ID:XpbS07Gqo
「うれしい、っていうのとは、違うかな。
でも、こさちに会いにきてくれたら、先輩の抱え込んだ荷物が、少しだけ軽くなるかもしれない」
だから、こさちは言うんです。
「やっぱり、忘れないでください。半端に覚えられてるよりは、完全に忘れるか、思い出してもらったほうが、助かります。
記憶はつくりものだから。すぐに削れて、わからなくなっちゃうから。
だから、ちゃんと思い出してください。先輩がこさちにしてくれたこと、ぜんぶ」
「どこにいるんだよ」と俺は言った。
「分かったよ。会いにいくよ。わけがわからないけど、俺を呼んでるなら会いにいく。
言ってることはわからないけど、俺に会いたいなら会いにいくよ。おまえにはずいぶん助けられたから。
だから、教えてくれよ。どこにいるんだよ、こさちは」
「もう一回」
「……なに?」
「もう一回、こさち、って呼んでください」
「……こさち?」
「もしもう一度会えたら、そのときはきっと、こさち、言葉にできないだろうから、今のうちに、言っておきます」
それからこさちは、屋上の縁の上に立って、フェンス越しにこちらを見た。
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