208:名無しNIPPER[saga]
2016/05/03(火) 23:43:42.08 ID:g8K72d6xo
◇
「どうして小説なんて書くんだろうね」
高森は、シャープペンを指先でくるくる回しながら、パイプ椅子にもたれたまま呟いた。
夏休みに入って最初の部活。静けさと開放感に満ちた校舎のはずれで、俺たちは蝉の声を聴きながら暑さに溶けていた。
「どうしてって?」
問いかけたのはゴローだった。俺はぼんやりと、何をするでもなく、天井に視線を投げながら、その会話を聞いていた。
「なんで、小説なんて、書いてるんだろうなあって、ときどき思うんだよね」
「楽しいから、じゃないの?」
どーなんだろー、と高森はいつもみたいなわざとらしいくらいのおかしな仕草で、うーんと伸びをする。
「なんていうかさ、物語を考えるだけなら、あらすじだけでもいいわけじゃない?」
「というと?」
「設定を考えるだけとか、頭の中で浮かべるだけとかさ、そういうのも、楽しいじゃない?」
それをどうして、かたちにしようって思うんだろう。誰かに見えるように、置いてしまいたくなるんだろう。
みんな、分からない、と言って首を振った。ゴローなんかは、考えたこともなかった、というふうに。
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