301:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:46:01.63 ID:GNfKg3P3o
「……」
みゃあ、と猫が鳴いた。首を傾げてから、俺の手の甲をぺろりと舐めた。
302:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:47:19.05 ID:GNfKg3P3o
みゃあ、とまた、猫が鳴く。
「……なついてますね」
303:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:48:29.31 ID:GNfKg3P3o
でも、もし、猫の引き取り手が見つかったなら、俺はもう少しマシな記憶として、猫のことを覚えていそうなものだ。
……あるいは。
自分の手で助けられなかったということだけを、覚えていただけなのか。
304:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:48:57.80 ID:GNfKg3P3o
◇
また来てね、と女の人は言った。猫は別れ際、門柱の脇に座って、「みゃあ」とまた鳴いた。
305:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:49:26.84 ID:GNfKg3P3o
俺の表情を見て、るーは不満気に口をとがらせる。
「あのね、タクミくん」
306:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:49:59.09 ID:GNfKg3P3o
……困ったな。
俺が生まれなければ、よだかは幸せになれたかもしれない。
俺がいなければ、もっと、世界は上手くまわっていたかもしれない。
307:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:50:32.49 ID:GNfKg3P3o
◇
少し落ち着きを取り戻してから、俺たちふたりが家に戻ると、母は「遅い!」と声をあげた。
308:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:51:01.38 ID:GNfKg3P3o
◇
自分の買い物はほとんどしてないくせに、なんだかふたりは充実した顔をしていた。
309:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:51:41.97 ID:GNfKg3P3o
「……まだ、考え中」
とにかく、俺はそう答えた。
310:名無しNIPPER[saga]
2016/05/15(日) 22:52:08.44 ID:GNfKg3P3o
何もかもを綺麗に覆せる魔法なんて、この世のどこにもない。
未整理のもの、散乱したもの、消化できないものをそのままにして、それでも歩くのをやめられない。
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