過去ログ - 屋上に昇って.
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374:名無しNIPPER[saga]
2016/05/17(火) 23:56:10.49 ID:Fxr7uh8Eo

 至近距離からこちらを見上げる、るーの顔。
 
 それをまだ、不思議だと感じてしまう。
 奇跡みたいに思えてしまう。

 春には想像さえしていなかった。

 一緒に歩いて、手を繋いで、どこかに出掛けて、そんなふうに過ごせるなんて。

 だからだろうか。
 とてもうれしいのだ。

 本当は、ときどき、泣き出したくなるくらいに。

 沸き立つみたいな衝動に押されて、静かに俺は、彼女に近付いていく。

 視界が染められるまえに、目を閉じた。

 たった数秒の出来事を、はてしなく長く感じる錯覚。

 顔を離してふたたび視線をかわしたとき、るーはなにかをごまかすみたいに俯いた。
 暗がりのなかで、彼女の頬が赤く染まっているのがわかる。

 俺の心臓も、遅れて激しく動き始めた。




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