54: ◆m03zzdT6fs[saga]
2016/04/18(月) 03:58:19.36 ID:yniCRVjXo
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『……ううん』
翌日、朝十時、約五分前。僕は一つの社屋の前にいた。名前を『シンデレラガールズ・プロダクション』という。いわゆる、芸能プロダクション。
ありていに言えば、昨日僕に電話をかけてきた男性がいるらしい場所である。とはいえ、外見は四階建てほどの小奇麗なビルだ。まだ建設中のようで、時折内装業者が出入りをしている。
だから何だ、と言われればそこまでだが、そこまで巨大な規模に見えないのに、社屋が放つ威圧感というか、存在感は酷く大きい。いや何か奇抜なところがあるか、と問われればない、と答えるのだろうけれど。
ただ、どこか典型的な大企業のそれに近しい風格のようなものがあるせいか、僕は入り口付近でまごついていた。当然といえば当然だが、あの出版社以外にこうして会社を訪れたことなど皆無である。
強いて言うならば単発で請け負った仕事の報告に向かうときなどはあるが、せいぜいビルの貸しオフィスがいいところだ。下に見るわけではないけれど、どうしても見劣りはする。
そういうわけで今から三十分も前に到着していたにも関わらず、入口の方を見たり、ビルを見上げたりしているというのは、なんとも情けの無い話ではあるけれど。ただ、まあ、いたずらに過ぎていく時間に焦慮を抱くことしかできなくて。
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