61:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:23:56.85 ID:skFt6CMPo
それからはもうりっちゃんはなにをいっても返事をしてくれなくなってしまった。
一投一投、時間をかけて淡々と石を投げ続けている。
あずにゃんのほうもなぜだかそこから動かないのだ。
わたしはもうこの愚かな儀式をくいとめるのを諦めてしまった。
62:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:24:43.41 ID:skFt6CMPo
いつしか水の跳ねる音だけしか聞こえなくなったとき、振り向くともう西の空も真っ暗になっていた。ただ天国だけが妙に白っぽく浮かんでいるのだ。
二人の罪深い少女の影がぼんやりと遠くに見える気がした。
りっちゃんはあずにゃんのほうに歩いていって、両方の肩をぐっとつかんで、言う。
63:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:25:16.62 ID:skFt6CMPo
13
ムギちゃんのお別れ会は午後から開かれた。
りっちゃんと澪ちゃんは先に行って折り紙の花綱とかきらきらのモールとか百均で買った5色の丸いクッションを並べたりして空っぽの部室に飾り付けをしている。わたしは朝からあずにゃんを探して公園でひとりギターを弾いたりしてたけど、なかなか見つからなくてほとんど諦めかけたとき、陸橋下で恐れを知らないレクサスにひかれそうなあずにゃんの腕をすんでのところで引っぱった。
64:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:25:46.86 ID:skFt6CMPo
りっちゃんが言う。
「乾杯のまえにムギから、一言どうぞ」
65:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:26:37.55 ID:skFt6CMPo
「でもいいよなー、アメリカ」
「ばか、旅行に行くんじゃないんだぞ」
66:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:27:07.71 ID:skFt6CMPo
「あ、もういっこ思い出した! 澪ちゃんにお願いがあったの」
「え、なんだ」
67:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:27:35.57 ID:skFt6CMPo
そんな感じで宴もたけなわになりはじめた頃、立ち上がって、りっちゃんが言った。
「ごほん……今日はわたしたちムギのためにとっておきの音楽を準備してきました」
68:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:28:07.39 ID:skFt6CMPo
こん。こん。こぉぉん。
どこから侵入したのだろう、音楽につられて天使たちがやってきた。
扉の向こうで押し合いへし合い、ドアノブをがちゃがちゃと回している。
バリケードがあるから押しても開かないのだ。引くドアだし。
69:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:28:47.11 ID:skFt6CMPo
そう思ったときふたつのことが同時に起きた。
二番の自分のパートを歌っていたムギちゃんの声が突然とまり、それからわっと泣き出した。
だけどわたしはそれを見つけなかった。別のものに気を取られていたのだ。
それはあずにゃんだった。
70:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:29:58.88 ID:skFt6CMPo
澪ちゃんは耳をふさいで座り込んでいた。
りっちゃんは壁に背中をくっつけたまま目を閉じていた。
ムギちゃんはまだ泣いている。
わたしも、わっと叫びそうになるのを、ぐっと飲み込んだ。
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