過去ログ - 唯「天使再来襲」
1- 20
64:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:25:46.86 ID:skFt6CMPo

りっちゃんが言う。

「乾杯のまえにムギから、一言どうぞ」

以下略



65:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:26:37.55 ID:skFt6CMPo

「でもいいよなー、アメリカ」

「ばか、旅行に行くんじゃないんだぞ」

以下略



66:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:27:07.71 ID:skFt6CMPo

「あ、もういっこ思い出した! 澪ちゃんにお願いがあったの」

「え、なんだ」

以下略



67:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:27:35.57 ID:skFt6CMPo

そんな感じで宴もたけなわになりはじめた頃、立ち上がって、りっちゃんが言った。

「ごほん……今日はわたしたちムギのためにとっておきの音楽を準備してきました」

以下略



68:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:28:07.39 ID:skFt6CMPo

こん。こん。こぉぉん。
どこから侵入したのだろう、音楽につられて天使たちがやってきた。
扉の向こうで押し合いへし合い、ドアノブをがちゃがちゃと回している。
バリケードがあるから押しても開かないのだ。引くドアだし。
以下略



69:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:28:47.11 ID:skFt6CMPo

そう思ったときふたつのことが同時に起きた。
二番の自分のパートを歌っていたムギちゃんの声が突然とまり、それからわっと泣き出した。
だけどわたしはそれを見つけなかった。別のものに気を取られていたのだ。
それはあずにゃんだった。
以下略



70:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:29:58.88 ID:skFt6CMPo

澪ちゃんは耳をふさいで座り込んでいた。
りっちゃんは壁に背中をくっつけたまま目を閉じていた。
ムギちゃんはまだ泣いている。
わたしも、わっと叫びそうになるのを、ぐっと飲み込んだ。
以下略



71:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:30:43.75 ID:skFt6CMPo

わたしはまだ逆巻いてる。
スポットライトがステージの上のわたしたちを照らす、蒸し暑い夏の夜の喧噪遠い音楽、りっちゃんがくだらない冗談を言って澪ちゃんが怒ってムギちゃんが笑う、あずにゃんが言う「わたし、もう一度唯先輩のギターを聞きたいです!」、わたしが言う「あんまりうまくないですね!」、中学校の卒業式に泣かなかったのはなんでだったろう、もっと過去、若い母親と父親の姿、憂が泣いているわたしは割れた首の取れた人形をつかんでいる、さらに幼い憂は笑ってる、わたしは小さい、四つん這いになって後ろ向きに高速で進む、声がした、黒い影、誰かが言う「まるで天使みたい」、だけどわたしは大声で泣きはらし、暗い暗い穴の中に吸い込まれ、そして再び死んで天使になるーーそのとき、天啓が降ってきた。
落ちた天使に誰かが頭をぶつけたっていう新しい意味じゃなくて、アイデアがひらめいた!っていう昔からの。
それはこういうこと。
以下略



72:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:31:42.53 ID:skFt6CMPo

え、待って、待ってよ、じゃあもしかしたら、あずにゃんが天使になったのもわたしたちとはぜんぜん関係ない理由からなのかもしれない。好きな人が別の学校にいてふられたとか、単に気まぐれとか。
わたしたちが思ってるほどあずにゃんはわたしたちのこと気にしてない。ありうる。天使たちは思ってるより人類に興味がない。これもありうる。大学はちょーハッピーは場所かもしんない。かもね。ムギちゃんはどこにいてもわりと楽しそう。まあね。澪ちゃんは単にホラー映画が好きなだけ。うん。りっちゃんはお父さんが死んでもぜんぜん気にしてない。これはおそらくない。お父さんとお母さんはあんな喧嘩しょっちゅうしてる。ふたりがわたしたち姉妹のこと全然わかってないみたいにわたしたちだってふたりのことなんか知らないのだ。
そうだよ、天使たちはすっごいいやなやつで人間たちがあわてふためく様子を見て天上でげらげら笑ってる。ゆえにあずにゃんは単に嫌みっぽくてやなやつだ。たしかに。
だけどなんで気がつかなかったの?
以下略



73:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:32:19.91 ID:skFt6CMPo

ま、いいや。とりあえずこのピックはもらっておこう。どうせあずにゃんだってわたしがあずにゃんのこれをもらったりしないときにちょっとなんかそれっぽいことを言ったりするのを聞いてはにやにやしてるんだろうし。それが天使風のやり方で、あずにゃんはずっと天使だったんだから。
わたしは言った。

「いろいろ言いたいことはあるけど、一番いいたいのはこの状況ってすごい笑えるよ、ってこと」
以下略



74:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:33:07.29 ID:skFt6CMPo

天使たちはもうわたしたちのすぐそば触れるとこまでやってきてていっせいに手を開く。
がらくた。
そして、あずにゃんは飛び上がった。
りっちゃんがとっさに宙に浮いたあずにゃんの腕をつかむ。あわててムギちゃんもそうする。澪ちゃんはムギちゃんにくっついてる。
以下略



75:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:33:49.09 ID:skFt6CMPo

「ずいぶん遠いとこまで来ちゃったねー」

「戻れるかな?」

以下略



76:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:34:15.63 ID:skFt6CMPo

雲の切れ間から夕日が無数の光線になって、差し込んでいた。
天国の階段。
たしかそう言うんだっけ。
ケーキにナイフを立てるみたいに、オレンジ色に染まった遠い空が白色の光で切りわけられている。
以下略



77:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:34:42.27 ID:skFt6CMPo

「なんかこういうのって冒険みたいだよね」

「わたし門限までに帰らないとお母様に怒られちゃう!」

以下略



78:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:35:10.52 ID:skFt6CMPo

りっちゃんが笑いながら言った。

「だけど、ホラー博士の澪ちゃんが言うには、わたしたちのうち生き残ることができるのはひとりだけだぜ」

以下略



79:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:35:53.95 ID:skFt6CMPo

「わたしとあずにゃんはもうふたりとも負けそうだから、タッグを組むよ」

ってわたしが言うと、ムギちゃんは

以下略



80:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 23:36:39.09 ID:skFt6CMPo

というわけで、今のところ、わたしたちは誰もかけずに5人そろっていて、まだ生きている。
そしてもちろん、そのなかで生き残るのはひとりだけで、そうなるのは他の誰かじゃなくてきっとわたしに決まってて、どんな卑怯な手を使ってもそうなってやるんだって思ったし、そしてその他のみんなもーーあずにゃんも含めてーーそれぞれにそう思っていた。
あずにゃんとわたしたちは風に流されて知らない場所まで飛んでいく。もうだいぶ遠くまでやってきてしまっている。知らない町の知らないアスファルトの上。
帰り道もわからない。
以下略



81:名無しNIPPER
2016/04/17(日) 23:37:47.75 ID:skFt6CMPo
おわりです!
ありがとうございます!


82:名無しNIPPER[sage]
2016/04/18(月) 00:20:45.68 ID:JTRp7ZL3o
乙乙
雰囲気好き


83:名無しNIPPER
2016/04/18(月) 09:25:01.21 ID:FPy8A4hho
感想らしい感想がでてこないけど、引きこまれました
世界観がすごい(小並感)


84:名無しNIPPER
2016/04/19(火) 02:16:25.09 ID:9ipNNVYN0
うむ、すごいとしか言えない
おつ


84Res/114.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice