過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/04/18(月) 01:09:53.40 ID:ZyCwTMFeo
人々が魔界と呼ぶ地の中央に聳える禍々しくも豪奢な城の最上最奥。その玉座の間の扉が重々しく開く。

『着たか』

『はい。ニンゲンの魔力波導です』

二人、いや二体のヒト型の魔族は何事もない様に会話を交わした。
魔王と呼ばれ魔界を支配し管理する雄型の魔族と、その魔王、唯一の側近である雌型の魔族。
人間としてみれば魔王は壮年の男性、側近は十代の少女に見えるほど幼い印象を受ける。
ヒトとさして差異のない姿をしてるものの、青白い肌や頭部から突出した魔力を帯びた双角は魔族の特徴であり、扉を開いた人間にはない決定的な違いだ。
開かれた扉からは、双手剣を携え明確な敵意と殺気をもった人間が歩を進めているにも関わらず、魔王は泰然と玉座に腰を据え、側近は悠然と傍らに佇んでいた。

『この扉がニンゲンの手によって開けられたのはいつ以来だろうな』

『畏くも申し上げます。主がわたくしをお傍に置いてくださって以来一度もございません』

『ふむ……』

扉を開けた人間の双眸は、今にも目の前の二体を射殺さんとするほど殺意に満ち溢れている。
歩みには優雅さも閑雅な振る舞いもない。その代りにここにいたるまでの過酷な経験を男は身に纏っていた。
顔には古傷が幾つも浮かび、装った鎧は所々が剥げ、内に着用している鎖帷子も砕けており、もはや防御の機能ははたしていない。
無精ひげはそのままに、まるで手入れのされていない黒いざんばら髪、その姿はさながら野盗のそれである。
しかし粗野な風貌とは対照的に清廉な闘気を放ち、それでいて裂帛の気合に男の身体は熱を帯びていた。
魔王はわずかに口角を上げ、歩を進める人間に語りかける。

「よく来た、ニンゲン。褒めて使わす」

「っ!」


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