14: ◆iIsZzNIzns[saga]
2016/05/08(日) 00:11:26.60 ID:GCfDBwrj0
― 同時刻 喫茶店 路地裏 外 ―
簪「(まだ出てこない……)」
そう思った簪の顔は疲れているように見えた。無理もない、時間にして決して短くない時間を尾行していたのだ。
簪「(そろそろ門限だし……今日は帰ろうかな……)」
ふと、しゃがんで座っているところを、誰かが肩を掴んでいた。
その肩を掴んだ人間を、簪は見上げる格好で振り向いて確認する。
男A「そこのお嬢さん、こんなとこでなにしてるの?」
男B「よかったら俺らと遊びいかない?」
顔を上げ、口をぽかんと開けて掴まれた肩を見ていた簪。
――時間にしておよそ数十秒ぐらいだろうか。
見つめ合った格好のまま簪が我に帰るまで、二人の男たちは、微動だにしなかった。
簪「え……あの、えっと」
突然、聞かれたことに戸惑いの声をあげると、男たちは口角を上げてにやにやと笑いながら簪の目の奥を覗きこむように目線を合わせた。
簪「(ど、どうしよう……)」
簪「あの……そろそろ帰らなきゃいけないので……」
なるべく刺激を与えないようにやんわりと言葉を発した。
簪に拒否をされた男たちは眉を釣り上げた。だが、すぐにまた柔和な表情に戻り、ゆっくりと小さな溜め息を吐き肩をすくめる。
断っても去る気配を見せない男たちの様子に簪は恐怖を覚えはじめる。
気がつけば、簪の掌にじっとりと手汗が滲んでいる。
そんな簪の心の揺れ動きようを知ってか知らずか男たちはさらに詰め寄る。
男A「あのさぁ、黙ってついてきてくんない?」
身震いをしてしまうかのようなゾワっとした悪寒が簪に走る。
端から見れば変化などない男の落ち着いたたたずまいに身の危険を感じた。
簪「いや……え……その」
男B「かまわねぇよ、さらっちまおうぜ」
男に溜め息をつかれ言われた瞬間、弾かれるように立ち上がり逃げようとした。
そこからは、スローモーションを見ている感覚だった。
走り出そうとした腕をつかまれ、口を手で塞がれた。叫び声をあげさせない為であろう。
簪「(ひっ!! いや! 助けて!! 誰かっ!!)」
簪「(――お姉ちゃんっ!!!!)」
「おい、なにしてるんだ?」
涙で視界がにじむ中現れたのは、調査対象である、織斑 一夏。その人であった。
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