21: ◆iIsZzNIzns[saga]
2016/05/09(月) 23:21:45.59 ID:FAWlJ3Xr0
― 夜 学園内 職員室 ―
一夏「千冬姉(ちふゆねえ)っ!」
名を呼ばれて座ったまま見上げる形で視線を向けると、血相を変えて走ってきた弟の姿があった。
一夏の姉で、彼のクラスの担任でもある織斑 千冬は小さく溜息をつき、眉根を寄せてやれやれと肩をすくめてみせた。
そのあとで、険しい顔つきになった千冬が一夏に向けて
千冬「何度言えばわかる、学園内では織斑先生と呼べ」
と、厳しく命じていた。
一夏「あ、すみません。織斑先生」
少しの沈黙の後、息を切らせている様子に緊急の用件だと察したのか、小言を飲み込んで先を促す。
一夏「――ということがあったんだ」
千冬「そうか」
一夏「そうかって……え、それだけ?」
路地裏での出来事をただ事ではないと報告してきた一夏に千冬はただ冷静沈着に短くぼそりと呟いてお茶をすする。
千冬「そうだが?」
一夏はぽかんと口を開けていたまま、すぐには状況が飲みこめないでいた。
学園の生徒が襲われたという認識と、千冬が対処してくれるであろうと思っていた展望がガラガラと音を立てて崩れていく。
興奮冷めない一夏にとっては、千冬の対応に温度差がありすぎたのだ。
明らかに狼狽している一夏へ向けて、呆れ顔で千冬は続けた。
千冬「話はわかった。襲われたという案件に関しては然るべき機関にきちんと連絡を通しておく」
一夏「は、はい。わかりました」
千冬「……しかしな、織斑」
千冬「お前は少し落ち着きを持て。動だけではなく静の心を持って冷静に周囲を見ろ」
一夏「うぅ……はい」
千冬「女生徒を助けたのはお手柄だったな」
千冬「怪我はなかったか」
落ち着きを取り戻した一夏はなんでもない、とばつが悪そうに笑った。
それを見て釣られるように千冬も苦笑した。元々整った顔立ちである為、笑うと、かなりの好人物であるような印象になる。
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