過去ログ - 佐久間まゆ「白くて苦い……」一ノ瀬志希「Love Potion♪」森久保乃々「えっ」
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6: ◆Freege5emM[saga]
2016/05/08(日) 16:51:09.06 ID:4QXj0yna0

もりくぼは、まっさらな日記のページを眺めているまゆさんを見ていたくなくて、
とりあえずこちらを向いてもらおうと、まゆさんの手に触れました。

まゆさんの肌は、血の代わりに水道水でも流れているような冷たさでした。
普段はきちんと結ばれている左手首の紅いリボンが、
シワだらけになってて、しかも濡れて色が変わっていました。

もりくぼがいきなり手を握ったのに、まゆさんはされるがままでした。

……誰か他の人を呼ぼうか……
でもそうすると、今のまゆさんを人に見せることになるんですけど……。



ボサボサに乱れたショートボブも、
腫れぼったい垂れ目も、目蓋に半ば隠れた視線も……
まゆさんの様子は、いつものきちんと整ってる姿とは、かけ離れていました。

「な、何か温かいものでも……も、もりくぼが淹れますので、待っててください……」

もりくぼたちは、アイドルです。人に見せちゃいけない姿というものが、あります。
もりくぼは、まゆさんを人目に晒すことが忍びなくて、
座布団と小さなテーブルを出して、まゆさんを机から引き・がしました。



もりくぼは、まゆさんと座布団を並べて座りました。
テーブルには、もりくぼが淹れた濃い目のお茶を並べました。
けど、もりくぼとまゆさんが黙りこくっている内に、冷めてしまいました。

「……こういうの、なんだか、珍しいですね……
 いつもは、ダメダメなもりくぼの話を、まゆさんが聞いてくれるところなのに……」

隣に座ったのも、お茶を入れたのも、以前にまゆさんがもりくぼへしてくれたことの真似でした。
もりくぼがレッスンや仕事でくじけて、寮室でメソメソしていると、
まゆさんは黙ってお茶を淹れて、もりくぼが何か話せるようになるまで、隣で座っていてくれるんです。



でも、もりくぼは、まゆさんほど堪え性が無く……つい、聞いてしまいました。

「……惚れ薬、とは……? ちょっと、信じられないんですけど……」

まゆさんに、誰か好きな人がいる――それは、もりくぼは今更驚きませんけど……
だとしても、惚れ薬なんて。話が飛躍し過ぎです……。



「乃々ちゃんは……まゆのプロデューサーさん、ご存じでしたか……」
「く、詳しくは知りませんけど……確か、まゆさんがアイドルデビューしてから、
 ずっとお世話になってる人でしたっけ……?」
「……ええ」

もりくぼとまゆさんは、担当のプロデューサーさんが別の人でした。
まゆさん担当の人について、もりくぼは詳しく知りませんけど……
評判では、どちらかと言えば放任主義な人と聞いていました。

逃げ道をふさいでグイグイ引っ張るもりくぼの担当さんとは、ちょっと違う性格のようです。

「……まゆは、プロデューサーさんのことが、好きなんです。出会った時から、ずっと」

まゆさんの口からこぼれた『好き』は、
ポジティブな言葉なのに、あんまりにも苦い響きがしました。

「プロデューサーさんの心が手に入るなら、ほかの何を捨ててもいいと、そう思って……
 なのに、まゆのプロデューサーさんは……」



まゆさんは、それきり何も口にしないまま、夜明けを迎えました。



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