1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:14:55.25 ID:kgPjdO9+0
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「その瞳に吸い込まれそうだ」と彼が言った。
それが、私の心を掴んだ口説き文句。
指が踊る、指が躍る。
彼のコーヒーにはいつも角砂糖を二つ。
甘いものは疲れた脳に良いんだと、笑いながら言っていた。
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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:16:17.62 ID:kgPjdO9+0
事務所で初めて会った時の、驚いた顔は今でも鮮明に思い出すことができる。
それから、「会いに来ました」と伝えた後の、とても困った表情も。
3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:17:27.52 ID:kgPjdO9+0
初めてのレッスンで、私の笑顔を褒めてくれた。
初めてのステージで、私の歌を褒めてくれた。
4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:18:23.49 ID:kgPjdO9+0
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ちらつく雪の降る中で、マフラーと一緒に甘い贈り物を手渡した。
春の桜が舞う中で、柔らかな日差しに二人で微笑んだ。
5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:19:07.38 ID:kgPjdO9+0
「君は俺の自慢のアイドルだ」と、頭を撫でてもらったこともあったっけ。
あの時は顔を真っ赤にしながら固まって、ドキドキしながら彼の手の、
その硬くて柔らかい不思議な感触に気持ちを集中させていた。
6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:20:09.23 ID:kgPjdO9+0
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でも……いつしか彼は私じゃない、どこか遠くを見つめるようになっていた。
私の瞳をのぞき込む度に、彼の中身はどこか彼方へ溶け出していくようだった。
7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:21:17.87 ID:kgPjdO9+0
恋の相手は、私だった。それも、彼の隣で愛を囁く私じゃない。
飾られた衣装を着て、きらめく微笑みを称え、輝くステージの上で愛の歌を歌う私。
8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:22:42.00 ID:kgPjdO9+0
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いっそ死が二人を別っていれば、悲しみの記憶に溺れることもできただろう。
彼が他の誰かと結ばれていたのなら、嫉妬の炎にこの身を焦がすこともできただろう。
9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:24:15.65 ID:kgPjdO9+0
「固く二人が結ばれて、決してほどけませんように」
……左手首のおまじないは、確かに二人を結び付けた。
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:25:39.00 ID:kgPjdO9+0
今宵も二人は埋めようのない溝を埋めようと、心と体を躍らせる。
あぁ、そんな彼が今でもとても愛しくて。
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/05/13(金) 01:27:34.05 ID:kgPjdO9+0
タイトルの元ネタになった「あいくるしい」は名曲。
以上、お読みいただきありがとうございました。
12:名無しNIPPER[sage]
2016/05/13(金) 01:28:24.14 ID:5ZqeLHb8O
乙、すごく詩的ですな
13:名無しNIPPER[sage]
2016/05/13(金) 01:29:35.81 ID:iLdu/ktWO
おつ
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