103:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:29:03.21 ID:49W9hqJ1o
そんな風に蘭子が外の世界と交流しているのを複雑な気持ちで見守っていると、美優はふと、自分が蘭子をどうしたいのか分からなくなる時があった。
蘭子には幸せになってほしい。その願いは絶対だった。
しかしドールにとっての幸せとは一体なんだろう。
成長もしない、そして今はまだ人間社会に関わることもできない、ドールにとっての"人生"とはなんだろう。
民間用ドールが作られるようになった本来の理由は、人口が激減し子孫を残すことが困難になった人間社会における社会的生存戦略の一環としての要員である。
いずれ世間に普及し人類を模倣したコピーとしての社会を築いていくのがドールの役目である。
しかしそれはあくまでマクロな長期的展望であって、蘭子という個とは何の関係もないのだ。
せめて近くに蘭子の仲間が……つまり他のドールがいれば、蘭子のこの孤独も少しはまぎれるのかもしれない。
そして美優は、その先にきっと蘭子の幸せがあるに違いないと思った。
蘭子が人間の友人と、人間の社会と深く付き合っていくのはそれからでも遅くはないのだ。
美優はこうして、蘭子が一人で外出することに反対するもっともらしい理屈を頭に思い浮かべながら、しかし一方ではそうやって自分の本心をごまかそうとしているという事も分かっていた。
美優は単に、蘭子が自分の元から離れて行ってしまうのを恐れているのだ。
この、母親というよりは父親が娘に対してするような切羽詰まった不安は、しばしば楓との口論の種になったりした。
楓「大丈夫ですよ。一人で外出させても、蘭子に何かあったらIDOLで調べればすぐに分かるんですから」
美優「何かあってからじゃ遅いんです。それにあの子がドールだっていう事が周りに知られたら、それこそ何をされるか分からないじゃないですか。あの子はまだ自分がドールだという事がどういう意味なのか分かってないんです」
楓「ちゃんと教えてあげればいいじゃないですか。蘭子、あなたは普通の人間とは違うのよ、って」
美優「よくもそんな残酷なことが言えますね!」
楓「残酷も何も、実際にそうなんだから仕方ないでしょう。それに、いずれ蘭子自身も気付くことです」
云々。
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