83:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:35:11.63 ID:49W9hqJ1o
お昼が近づき、辺りが混雑してきたので、3人は手早くランチを済ませ移動することにした。
蘭子も含めて相談した結果、寄り道せず先に目的地へ向かってしまおうという事になった。
蘭子は特にそれを残念がったりしなかった。
というのも、サイン会が行われるのはこの商店街で一番大きい書店だったので、本好きの蘭子にとっては夢にまで見た場所なのだ。
楓「書店っていうのも古風でいいものですね」
この時代では本を直接取り扱っている店というのは珍しい。
紙媒体の本そのものが淘汰されたわけではないが、基本的にオンラインショップで購入する場合がほとんどだった。
目的地は、他の店舗と比べて頭二つほど大きな建物だった。
『鷺沢書房』という小さなプレートが掲げてある。
一見何の変哲もないビルのようだが、なぜか周りの景観からひどく浮いているような印象がある。
商店街ができるずっと前からここに建っているような、歴史の重みを感じさせる出で立ちである。
先のRosenburgAlptraumという店も異質だったが、こちらはもっと別な意味での異質さを放っていた。
美優「この建物の中が全部その書店なんですか?」
楓「そうみたいですね。小説、漫画、専門書……それぞれ階によって分かれてるみたいです」
蘭子「早く行こう!」
蘭子は今にも駆け出しそうな勢いで2人の手を引っ張って行った。
中に入ると、そこは魔窟さながらの迷宮だった。
目もくらむようなおびただしい本の数々である。
天井付近まである本棚、人がやっとすれ違える程度の細い通路、
そして馴染みのない独特の香りが充満していたので、美優は圧迫感に息が詰まりそうになった。
蘭子もこの光景に圧倒されてしまい、もはやどうしたらいいか分からないといった様子で茫然と立ち尽くした。
下手に踏み込んだら二度と外へ出られないような気がした。
「本をお探しですか」
どこからともなく声が聞こえた。
キョロキョロと見渡すと、本棚の影に小さな利発そうな少女が立っているのが見えた。
197Res/206.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。