84:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:35:57.99 ID:49W9hqJ1o
楓「いえ、特に本を探しに来たわけではないんですが……」
「ああ、二宮飛鳥先生のイベント参加者ですか」
蘭子「は、はい!」
85:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:36:40.16 ID:49W9hqJ1o
「困りましたね。今ここに迷い込まれるとかなり面倒なんですが……」
美優は少女の言っている意味が分からず、再び蘭子を探しに行こうとしたが、またしても少女が阻もうとしたので、
美優「もう、どういうことですか? なんで中に入っちゃいけないんですか? そもそもあなた、誰なんですか?」
86:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:37:25.66 ID:49W9hqJ1o
少女に従って中に踏み入ると、2人は狐につままれたような気持ちになった。
確かに迷宮なのである。
通路の突き当たりを曲って歩くとまた別の通路に突き当たり、自分たちが今この建物のどこに居るかも分からない。
橘「お客様はどちらもご来店は初めてですか?」
87:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:38:23.66 ID:49W9hqJ1o
……しばらく歩いて、階段を上り、また歩いて階段を上り、本当にこのまま蘭子を見つけられるのか心配になった頃、
橘「つきました。たぶんここに居ると思います。たぶん」
そう言って指差した先は、ひっそりと壁に張り付いているような扉だった。
88:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:39:46.66 ID:49W9hqJ1o
文香「ありすちゃんも、ありがとう」
橘「私にかかれば、これくらいどうってことありません」
フフンと鼻を鳴らして得意気である。
89:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:41:12.63 ID:49W9hqJ1o
文香「元々、ここは図書館でした。遥か昔、全国的な図書館民営化の流れで、いくつもの価値ある図書が利益至上主義のもとに淘汰され、それを見かねた私の祖父がこの街の図書館を買い、こうして人類の共有財産である知的文化の保存を目的とした書店が作られました。それ以来、鷺沢の者が代々ここの経営者を務めています。
文香「しかし父の代で、この書店に異変が起こりました。どんなに本を並び替えても、次の日には別の場所に本が移動しているという現象が頻繁に起きるようになったのです。次第にそれは日毎ではなく時間毎、分毎に変わり、さらには本棚や店の構造まで変化してゆき、いつしかこの店は誰にもその全容が分からない迷宮と化してしまいました。
文香「さらに、いつの間にか注文した覚えのない本が並んでいたり、明らかに建物のスペースに収まりきらない長い通路が出来ていたり……建物の枠を超えて、本と空間が無限に増え続けていったのです。そんな奇怪としか言いようのない事態が次々に起こるので、とうとうある日、内部の本格的な調査が行われる事になりました。
90:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:42:29.50 ID:49W9hqJ1o
――……楓たち3人は、ありすに案内されて無事に外へ出ることができた。
ありす「お客様はツイてます。文香さんのお話を聞けるなんて」
美優「う〜ん、私、聞いてたらなんだか頭が痛くなっちゃいましたけど……」
91:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:43:08.82 ID:49W9hqJ1o
◇ ◇ ◇
さて、ようやく本当の目的地である。
ありすや文香と話し込んでいる間に、会場にはすでに多くのファンが集まって列を成していた。
92:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:44:06.56 ID:49W9hqJ1o
そんなお祭りのような列に並んで数分後、飛鳥が会場に到着し、黄色い声援を受けながらサイン会が開催された。
蘭子は初めて見る憧れの漫画家を見て興奮していた。
手にはサインしてもらうつもりで用意した単行本を大事そうに抱えている。
美優は蘭子の体力を心配したが、思ったより列の進みが早かったので、水筒の栄養ドリンクを一口飲ませている間にはもう飛鳥の姿が近くに見えてきた。
93:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:44:51.98 ID:49W9hqJ1o
飛鳥は手を動かすのを止め、初めて蘭子をまじまじと見つめた。
美優は慌てて翻訳しようとしたが、今回は少し難解であった。
なんとなく無礼なことを言ったような気がしたので、謝ろうとした瞬間、
飛鳥「……へえ。キミのセカイにはそんな風に共鳴したのか」
94:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:45:41.60 ID:49W9hqJ1o
楓「……おかえりなさい。楽しかった?」
蘭子「うん!飛鳥先生、すっごくかっこよかった!」
蘭子はこれ以上ないくらい満足気であった。興奮未だ冷めやらず、といった様子である。
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