88:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:39:46.66 ID:49W9hqJ1o
文香「ありすちゃんも、ありがとう」
橘「私にかかれば、これくらいどうってことありません」
フフンと鼻を鳴らして得意気である。
楓「すごい。どうして蘭子がここにいるって分かったんですか?」
すると橘……橘ありすは得意気な顔を強張らせて一瞬ぎくっとした。
そして何やら恥ずかしそうにモジモジして答えるのだった。
ありす「……と、とりあえず文香さんの所に来れば何か分かるかなって思って……」
楓(当てずっぽうだったのね……)
ありす「あっ、いま少し呆れましたね!? 違います、ちゃんとした理由もあるんです!」
なぜか怒るのである。
ありす「この人……蘭子さんでしたっけ? この蘭子さんがふらっと中に入って行った時、少し様子がおかしかったんです。何か虚ろな感じで……こう、本人の意志とは無関係に本に誘われるような、そんな感じで」
蘭子「あのっ、その……わ、私も気がついたらいつの間にかこの部屋にいて……自分でもよく分からなくて……」
蘭子は弁明するように言った。
ありすが続けて説明しようとしたが、上手く言えなさそうにまごついていた。
文香が口を開いた。
文香「ほんの稀にですが、迷い込んだ人のうち、何人かは夢遊病のようにここへ辿り着くことがあるのです。普通、この書斎に来ることができるのは案内人……つまり店員だけなのですが、空想の世界にその人生の根を下ろしている人や、情報そのものに何か信仰心のようなものを抱いている人などは、この書斎に……つまりこの本屋の中心部へ自然と誘われてしまうそうなのです……」
楓「……この本屋は、この建物は一体、なんなんですか?」
痺れを切らして楓が質問した。
不思議な現象には慣れていたが、こんな店は聞いたことがない。
文香「ここは断片化された情報が群を成し自律的に変移、成長していく巨大な細胞の中……いわゆるスペースネットの始まりの地と言われています」
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