過去ログ - 提督「荒潮がセックスと言うのだから、朝潮もセックスと言うのだ」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/06/06(月) 04:25:21.33 ID:iz0HsH6m0
荒潮は己の言語活動全てを「セックス」にしてしまうほど世界に絶望しているのだ。朝潮はそう思った。

「セックス」。荒潮がそれを言ったのは朝の出来事であった。朝潮と荒潮は二人向かい合って朝食のテーブルに座している。

初夏の季節。大きく開かれた窓から風が滑り込み白いレースのカーテンを大きく孕ませていた。旅行者めいた涼やかな風に揺れる机上のキキョウ。机の下には覚えのない白猫が寝転んでいた。遠くからキジバトの特徴的な鳴き声がホーホホッホホーと聞こえてくる。

「セックス」。荒潮は再び言う。キジバトの声がホーホッと半端に途切れて静寂。朝潮は焼けたトーストにピーナッツクリームを塗る手を止めた。

荒潮は澄んだ瞳で朝潮のことをじっと見ていた。朝潮には荒潮の発言がとても純粋なものに思われた。

「セックス」。荒潮は三度言う。先ほどと変わらず底意のない純粋な言葉だった。それのみで全てが完結していて含みがない。

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/06/06(月) 04:26:47.77 ID:iz0HsH6m0
「セックス」は「セックス」以上でも以下でもなく純粋に「セックス」だった。そして朝潮にとって、その水晶玉の如く透明で滑らかで捉えどころのない「セックス」は馴染みのないものだった。

朝潮は荒潮がどうしてそんな言葉を口にしたのか真意を確かめたい気持ちになったが、恐らく探りを入れても「セックス」と返ってくるだけだろうと確信した。

それにその「セックス」は朝潮にとって不可解な出来事であるのは事実であったが、未知に遭遇したときに感じる特有の畏怖の念を持つこともなかったので、朝潮は直接深く追究する衝動に駆られることもなかったのだ。
以下略



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