過去ログ - 佐々木千枝「ビター&スウィートシックスティーン」
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◆ohd.LsER4s
[sage saga]
2016/06/07(火) 22:06:01.34 ID:QLtz83v8o
「ふふ、でもありすちゃんのスウィートシックスティーンはもうすぐ終わっちゃいますね?」
「わ、私もまだ一月以上はありますからね!」
顔を紅くしてむくれるありすちゃんは、ぷすりとフォークをショートケーキに刺して、そのまま一息に、ぱくり。
いかにもご機嫌ナナメですといった顔をして、リスのようにもぐもぐするその様子は、……そこだけは昔と変わらない、コドモのままのありすちゃんだった。
「……あの、それになんていうか、ほら……そういうのって、楽しそうじゃないですか」
ぼそりと、聞き取れないくらい小さな声で漏らしたその言葉。
こういう時はたいてい、ありすちゃんの本音が出ている時だと、もう何年も一緒にいるからわかっている。
「えっと、……パーティのこと、かな?」
どうやら正解だったようで、ありすちゃんは少しうつむいたまま、こくりと頷く。
「最近は忙しくてなかなか会えませんし……いえ、仕事が多いのは喜ばしいことなのですが、その」
「そっか、そうだねぇ……」
みなまで言うな、といった感じでため息をつく。ありすちゃんの気持ちはよくわかるつもりだ。
自分用に取り分けたショートケーキに、プラスチックのフォークをぷすり。
誰かの誕生日の度に、こうやって集まれる人たちだけでもお祝いをしたり、してくれたり。
すごく嬉しいことなんだけど、でも……甘い甘い十六歳の私たちは、どうしてもワガママに出来てしまっているらしい。
――足りない、もっと。もっと。
もっと会いたい、もっと一緒にいたい。
時にそれが叶わないことだってわかっていても、私たちのために頑張ってくれているってわかっていても、それでも……
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