36: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:41:46.50 ID:9fy5FiS10
「ねえ。また会えるんでしょ? たまには帰ってくるんだよね?」
「まあな。落ち着けばな」
「……勉強しにいくんだから、遊んでばかりいちゃダメだよ」
「咲に言われなくてもわかってるよ」
「特に女の子とね。都の女の子は綺麗な子も多いって聞くけど、惑わされちゃダメだからね」
「んー……嫁探しもついでにできれば、とか思ってるんだけど」
ぴしり。
「……へぇ?」
「なんて、冗談だよ。女とか、あんまり興味ないし」
「ふーん……」
「咲こそ、ちゃんとしてろよ。ポンコツなんだから」
「む」
「テキトーに歩いて迷子になったりとかするなよ? 俺ももう探しに行けないんだから……そうそう、初めて会った時もさぁ、憶えてるか?」
憶えてるに決まってる。
森で迷子だった私を、助けてくれた時の事。
「あの時から、まるで変わってないからなあ……」
「ふん。おかげ様で、蝙蝠くらいは殺せるようになったから」
「はは。そうだったな」
京ちゃんは、私の頭を撫でた。
京ちゃんの手は、心地良かった。
改めて、京ちゃんを見る。
腰に差した刀と短刀。背負った石弓。普段絶対身に着けない草履と、被り笠。馬に括りつけてある様々な荷物。
本当に、京ちゃんは行っちゃうんだね。
拳を握る。滴る汗の感触。
今しかない。
京ちゃんに私の想いを伝えられるのは、今をおいて他にない。
なぜか急に、そんな気がして。
「京ちゃん……! 私――…!」
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