35: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:40:40.40 ID:9fy5FiS10
「以上で、私の言葉とします……」
ほら。何の問題も無く喋れたじゃん。
拍手が沸き起こり、村の大人たちは京ちゃんを讃え、儀を盛り上げた。
「京太郎。ちょっといいか?」
優希ちゃんが京ちゃんを呼び出しているのを見た。
きっと、自分の想いを伝えるんだろう。
見たい。確かめたい。けれど、それは誠実じゃない。
私は気持ちを押し殺して、林の中に消える二人を見送った。
数分後、優希ちゃんが戻ってきた。
私を見つけると、乾いたように笑った。
そしてそのままどこかへ行ってしまった。
まあきっと、そういう事だろう。フラれたんだろうな。
正直、京ちゃんが優希ちゃんを女の子として見てるとは思えなかったしね。
それでも、大切な友人を想うと、私は胸が締め付けられた。
優希ちゃんは決着をつけたのだ。京ちゃんと。そして何より、自分自身と。
頑張った……ね。私より、凄いよ。私なんかよりも、ずっと。
京ちゃんが少し遅れて林から出てきた。気まずそうな表情をしている。
私と目が合うと、すぐに逸らした。
私がどう動こうか迷っていると、意外な事に京ちゃんがこちらに向かってきた。
「咲」
「きょ、京ちゃん……?」
「お別れだな」
……今度は私の番だ。
私は、自分の気持ちを自覚している。
伝えたい。でも……!
「……そうだね」
伝えるべきじゃない。
永劫の訣れじゃないのなら。
ここで伝えるべきじゃない……
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