32:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:41:23.58 ID:4Q6l07Joo
それからしばらく彼女は静かになった。
相変わらず笑っていたけれど、それでもどこか元気がなかった。
33:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:41:53.40 ID:4Q6l07Joo
村の住人が死んだ。
これは突然の事ではなかった。
その人は前から少し風邪っぽくて、治んないねえと笑っていたら突然悪化、数日も経たないうちに死んでしまったのだった。
34:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:42:19.33 ID:4Q6l07Joo
村長の家から明るい声が消えて数日が経った。
彼はイライラと家の椅子に座ってた。
あまりにイライラしていたので、その揺れで椅子がカタカタ鳴った。
35:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:42:45.89 ID:4Q6l07Joo
ある日彼は村長に呼ばれた。
娘に会ってほしいという。
彼は無言で部屋に入った。
36:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:43:26.80 ID:4Q6l07Joo
「友だちに会うのは久しぶり。お医者さん以外は誰も入っちゃダメだから」
「……」
「怒りんぼさん、元気だった?」
37:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:43:52.81 ID:4Q6l07Joo
「お医者さんがね、もう長くないって言うの」
「……」
「嘘だぁって言っても笑ってくれないの。ひどいよね」
「……」
38:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:44:44.45 ID:4Q6l07Joo
「ねえ怒りんぼさん、あの日みたいに手を握って」
差し出された震える手を彼は両手で握りしめた。
彼女は目をつむって「あったかい」とため息ついた。
39:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:45:11.12 ID:4Q6l07Joo
その夜、いつも笑っていた少女が息を引き取った。
彼は自分の部屋の暗がりで、いつまでも闇を睨んでいた。
40:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:46:04.11 ID:4Q6l07Joo
朝、少女のお墓の前に立った後、彼は村を後にした。
村は病が過ぎ去った後の悲しみで、彼が出ていったことに気づきもしなかった。
41:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:46:34.13 ID:4Q6l07Joo
村から出た彼はひたすら北を目指した。
叩きつけるような雨の中を、全てを吹き飛ばすような風の中を、ただひたすら北を目指した。
北には世界の果てがあり、とてもとても高い山がそびえているという。
42:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:47:00.01 ID:4Q6l07Joo
切り裂かれるような寒風の中、彼は一心不乱に道を登った。
あまりに寒さが厳しくて、彼は体の感覚を失った。
ぼうっとしたまま歩いているとやがて絶壁に突き当たる。
どんなにあたりを探ってみても、道の続きはどこにも見つからない。
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