8:名無しNIPPER[saga]
2016/07/01(金) 01:51:44.68 ID:YGge3a1w0
7
ある日。
私は仕事を終えて帰ってきたところだった。なんとなく静寂が耐え難くて、珍しくテレビを付けた。私はそのままバッグを放り投げて、ソファに自分の身を預けた。
もう、このまま眠ってしまおうか……ああ、でもメイク落とさないと荒れるしなあ。あそこのスタイリストさん、怖いんだよなあ。そんなことを思いながらも、私は目蓋を閉じた。
『それでは、歌ってもらいましょう。曲は――』
テレビからそんな声が聞こえて、何かの曲が流れ始める。
なんだか、壮大な感じのイントロだ。バラエティっぽいのに、どうして、こんな……。
うとうとしながらも私はそんなことを思っていた。まあ、いいや。とりあえず、このまま……。
その時だった。
『渇いた風が 心通り抜ける……』
テレビから聞こえてきた声に、私はガバッと顔を上げた。
身体を起こして、私は食い入るようにテレビを見た。テレビの音量を上げて、そして――
優しい風が、耳を撫でた。
「……高垣、さん」
少し緑がかった髪に、宝石のように綺麗なオッドアイ。
テレビの中に、彼女はいた。
そして、そこに映っていた、彼女の表情は――
「……ずるいですよ、高垣さん」
そんな顔を見たら、納得するじゃないですか。
「納得するしか、ないじゃないですか……」
その日。
私は高垣さんにもらった日本酒を開けた。
それはやっぱり、私には少し度数が高くて。
でも、とてもおいしかった。
終
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