過去ログ - 速水奏「The Dark Side of the Moon」
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8:墓堀人[saga]
2016/07/01(金) 12:35:10.99 ID:kj4bVlfs0
「あら、文香じゃない。久しぶりね」


私は小さな笑顔を浮かべつつ、彼女の隣のロッカーを空けた。


「お元気そうですね…最近はお仕事でもご一緒する機会が無くて…少し寂しいです」


彼女は儚げな声でそう呟くと、脱ぎかけのジャージを脱ぎさってロッカーから着替えを取り出した。これからレッスンの私とは反対に、彼女はレッスン終わりらしい。

私は着てきた上着をロッカーにかけながら、そんな彼女と視線を交わす。


「そうね、お互い個人での活動がメインだし、私と文香じゃ方向性が違うもの」


彼女は知的でクールな清純派、最近週刊誌に「346のゴシップクイーン」というあだ名を付けられた私とは正反対だ。


「そうですね…私も奏さんのように華やかになれたらいいのですが…」

「貴方はそのままで十分魅力的よ、私のようになったらいけないの」


そう、私のようになっては欲しくない。

レッスン着に袖を通しながら私は文香の方へと視線を移す。

ジャージから私服へと移り変わる衣服の隙間から白く柔らかな肌が見える。私自身色白の方ではあるが、私の肌を陶器とするなら彼女の肌は上質のシルクのような滑らかさを持っていた。

出会った頃、青白かったか細い腕は生きた血肉で桃色に染まり、重ねた年月と努力の後が垣間見える。


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