過去ログ - 開かない扉の前で
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798:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:42:11.82 ID:IXxsBwaSo

 エレベーターは静かに昇っていく。

 街があっというまに小さくなっていく。

 さっきまで見上げていた建物も人も車も、全部が全部遠ざかっていく。

 すべてと距離が置かれ、何もかもがわたしから離れていく。

 そうやって全部なくなっていく。

 小さな、小さな粒のようになっていく。

 ふと、ケイくんが、

「ごめん」

 と、小さく呟いた。

 わたしは目の前の景色から目を離すことができないまま、言葉の意味を考える。

「ごめんって、なにが?」

「言うべきだった。……会えたかもしれない。そうしたら、なにか変わったかもしれない」

「ケイくん?」

「おまえの叔父さんだったんだ」

「……なにが?」

「碓氷遼一を、刺したの。おまえの叔父さんだったんだよ」

「……どういう意味?」

「向こうの世界の、過去の、碓氷遼一が、こっちにいたんだ。俺は会った。言葉も交わした。
 でもどうしてもおまえに言えなかった。どうしてだろうな。なんで言えなかったんだろう。
 でも、言うべきだった。おまえは会えたんだ。七年前の姿だったけど、あの人はおまえを知ってたんだ」




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