過去ログ - 開かない扉の前で
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96:名無しNIPPER[saga]
2016/07/17(日) 23:25:00.01 ID:MgYlpmbSo

 しかたなく、僕は首を横に振る。

「急に言われても、ピンと来ないな。……篠目はどうなの?」

 篠目は、僕の言葉に何秒か考えるような間を置いたあと、緩慢な動作で面を上げて、こちらを見た。

「わたし?」

「そう」

「わたしは……」

 篠目は、黙りこんでしまった。
 真剣に考え込んだ様子の彼女には悪いけど、僕は彼女の個人的な望みになんてほとんど興味がなかった。

 昼休みの図書室の利用者は少ない。
 日に焼けたカーテンに濾された日差しが、薄暗い室内にかすかに差し込んでいる。
 
 僕と篠目のほかに、いま、この場には人間なんていなかった。

 そんななか、僕は黙りこんだ篠目を思考の隅に追いやって、自分のことを考える。
 放課後のバイトのこと、午前の授業で出された課題のこと、家のこと。

 僕が考えごとをしているあいだも、篠目は結局黙りこんだままで、
 僕たちは昼休みの時間を、退屈しのぎの本を読み進めることすらできないまま不毛に使いきってしまった。




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