982:名無しNIPPER[saga]
2017/12/11(月) 00:57:21.21 ID:S5mn3zpLo
「……ね、どこに行ってたの?」
「長い話になる」と彼は溜め息混じりにいって、わたしの背後に腰掛けた。
同じ切り株に、わたしたちは背中合わせに座っている。
風がまた吹き抜けて、本のページをめくる。
木々の梢で赤らんだ葉が、いくつかひらひらと舞い落ちていく。
「どうしても聞きたいっていうなら、話してやってもいい」
「そんなに、興味があるわけじゃないかな」
「……なんだよ。気になるだろ、少しは」
「聞いてほしいの?」
「いや。でも話すよ。面倒なところだけ、省略するけど」
「うん。そのくらいが、ちょうどいいかな」
彼がわたしの背中にかすかに体重をかけた。
「ね、ちょっと重い」
「悪いな。さっき帰ってきたばっかりで、疲れてるんだ」
「……さっき?」
「ちょっとした賭けに巻き込まれてたんだ。もっとも、俺がどう動くかが対象の賭けで、俺が賭けたわけじゃないけど」
「ふうん」
「まあ、でも、結果だけ見れば、俺は騙されなかったってことになるんだろうな。あいつの負けだ」
「……じゃ、勝ったの?」
「だから、俺は参加者じゃなかったんだよ。……でも、まあ、勝ったっていえば、勝ったな。ここにいるわけだから」
「大変だったんだ」
「そう、大変だった」
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