143: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/04(木) 17:00:53.73 ID:iV9Di2Df0
二人を乗せたバイクは、夕暮れの峠を下る。
夕焼けの色と紅葉は、昼のそれとは一味違う表情を見せていた。
西日に目を細めながら、北上は今日と言う日の満足感に、嬉しそうな顔を浮かべていた。
「ケイちゃーん。」
「どうしました?」
「また来ようね。ここ、桜もすごいんだって。」
「そりゃ是非とも。次は花見ですね。」
また増えた約束に、彼女はきゅっとケイの腰を掴んだ。
その胸に訪れるのは、一抹の幸福と、複雑な想い。
“今日も本当の事、言えなかったなぁ…。
言えないよ。そしたらケイちゃんは、きっとアタシの事……。”
不意に疼く古傷は、一瞬彼女の息を乱した。
しかし目の前には、特効薬がいる。
その背中を見つめて。彼女はすぐに、その疼きを忘れる事が出来たのであった。
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