過去ログ - 北上「離さない」
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151: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/09(火) 15:36:01.46 ID:8dWkI+gE0


「はい、こちら今回の部屋割りとなります。無くさないよう気を付けてくださいね。」


そして再び、北上と夕張のいる自動車訓練所。
初日は車両説明と学科のみで終わり、今は宿代わりの寮の説明を終えた所だ。

どのような規則性で部屋が振られているかは、特に説明はなかった。
常識で考えるならば同じ鎮守府で固める所だが、一縷の希望として、全体のあいうえお順であって欲しい。
夕張はそう考えつつプリントに目を通すが、その希望は、余りにもあっさりと打ち砕かれた。


「おー、夕張ちゃん一緒じゃん。良かった良かった。」


“どの口が言うか”と喉元まで出掛かったのを、夕張は必死に飲み込んだ。

移動までのバスの車内、北上は早々にイヤフォンを耳に入れて、自分の世界に入ってしまっていた。
勿論バスの中で会話はなく、漏れてくる音楽が絶妙に夕張の趣味に近いのが、却って気まずさを増すばかり。

余りにも妙な空気に、心がチアノーゼになりそうな気配を感じていた時、上の荷台からちゃり、と小さな音が一つ。
北上のリュックに付けられたぬいぐるみが、弾みで荷台から吊られた状態になってしまったようだ。

ん?見覚えがあるぞ、と夕張がそのぬいぐるみをよく見ると、工廠でも同じ物を見た記憶が蘇る。
そう言えば、ケイもキーケースに同じ物を付けていた。
確かこの前、ツーリングに出たと聞いたのを思い出した辺りで横を向くと…北上が夕張に視線を向けていた。

ふふん、と鼻息が聞こえてきそうなご機嫌な顔でだ。
ただし、目の奥が笑っていない。

それを目の当たりにした時、夕張の女の勘は全力でその存在を激しく主張した。
“ほぼ間違いなく、自分の気持ちは気付かれている”と。

そしておもむろにイヤフォンを外すと、北上は何事もなかったかのように夕張に話し掛ける。


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