152: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/09(火) 15:38:22.26 ID:8dWkI+gE0
「それ、かわいいっしょ?○○市のゆるキャラなんだってー。こないだケイちゃんの後ろ乗っけてもらってさー。」
「え、ええ、今年最後のツーリングって言ってましたし。
あのバイク大きいですよね。私も前一緒にご飯行こうとしたら車壊しちゃって、代わりに乗せてもらって……。」
「うん、知ってる。コンビニで見たもん。」
見られていたと知り、夕張は驚愕を隠せずにいた。
件のコンビニは、鎮守府の者がよく使う店だ。ましてやあの時は夕方、見られていてもおかしくはない。
その中に北上がいる可能性も、充分に高かったのだ。
「夕張ちゃん、バッテリー上げちゃったんだって?ダメだよー、ちゃんとライト切らなきゃ。ま、車の免許ないアタシが言ってもだけどさー。」
「車の方は持ってないんですか?」
「バイクの小型しか無いよー。だから今回来たんだよね。
アタシも乗せてもらってばっかじゃなくて、乗せてあげないとなーって。ケイちゃんを。」
何故そこで恍惚とした笑みを浮かべる。
どこへ連れて行く気だ。何をする気だ。ナニをするのか。
ネオン輝く峠の城か。それとも無人の駐車場か。
思わず夕張はまくし立てるように突っ込みたくなるが、しかしこちらが何かされた訳では無い。
いつか漫画で見たように素数を数えて気を落ち着かせようとすると、またちょんちょんと肩をつつかれ、今度はスマートフォンの画面を見せられる。
「これこないだのー。ケイちゃんが休めたのも、夕張ちゃんのおかげだよ。ありがとね♪」
そうして見せられたのは、先日撮られた峠でのツーショット写真だ。
紅葉を背景とした実に楽しそうなツーショットであり、北上は上手く収まろうと、ケイに密着して写っていた。
それはもう、ぴったりとだ。
普通であれば、今の感謝の言葉でこんな感情を抱くのは被害妄想だ、と夕張は考えていた。
そう、普通であればだ。
その写真を見せてきた時の北上が、清々しい程のふんす、とした顔を晒していなければ、の話。
“ふふ…もうやだ、帰りたい……爆発しろー、ちくしょー。ばかやろー。”
人間とは、こうも本音を上手く隠せるものなのか。
と、愛想笑いを浮かべる自身の表情筋にドン引きしつつ、夕張は10秒にも及ぶ溜息を心の中でついていたのであった。
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