過去ログ - 北上「離さない」
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244: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/09/06(火) 01:29:26.41 ID:0cI4rqiK0



「あー、快調ですね…。」
「でしょー?何年ベスパ乗ってたと思ってんのさー。」


「今の所は」と言いたいのを、ケイは必死に我慢していた。

まだせいぜい、最寄りのコンビニに差し掛かる所だ。
しかしいつもバイクで10分程度のこの距離が、今の彼には何倍もの長さに感じられていた。

目先には、見慣れたコンビニの青い看板。
ここを越えれば、遂に国道に入る。

今回北上が行こうとしているのは、枕を買い換えたいとの事で、隣町にある総合家具店だ。
ナビの表示には、残りおよそ12キロとの記載。
そしてこの片田舎の国道は、所謂輩運転の車が跳梁跋扈する、初心者にとっての鬼門である。

50キロ制限のこの道路ではあるが、警察のパトロールが無い限りは、皆60キロオーバーで走る。
おまけに所々一方通行の分岐があり、一つ分岐を間違えようものなら大変な迷子になる。
彼女もベスパの頃であれば、散々通った道。
しかし慣れない車となった現在、果たして無事に辿り着けるのか。

北上以上に、ケイの方に緊張が走っていた。


「ケイちゃん、車間距離ってあんな近いもんだっけ…。」
「後ろのダンプは気にしたら負けです、若葉マーク煽る時点でお察しですよ。安全運転で行きましょう。」


北上の車は、現在58キロで走っている。
法定速度内で走行しているものの、後続のダンプカーがぴったりくっついて煽ってきていた。
終いには、パッシングが2発。
追い越し禁止車線故に抜かれる事は無いが、ダンプは微妙に蛇行を繰り返し、尚も挑発をやめようとはしない。


「へー……いいねえ、しびれるねー…。」
「ダメですよケンカ買っちゃ。でも確かに危ないですね…ユウさん、コンビニあるんで一旦入りましょう。」


駐車場の時こそ危うい場面は多かったが、彼女が勘を取り戻すと、運転そのものはそこまで問題は無い。
しかしこのままでは良くない。ケイはコンビニに一度車を停めるよう促し、とりあえず深呼吸させる事とした。


「はい、ジャスミンティー。」
「ありがと。はー、幸先悪いねー、あんにゃろめ…。」
「バイクはある程度勝手に避けてくれますからね…まぁゆっくり行きましょう。
でもあそこの家具屋かー…ユウさん、ついでに俺も買い物して良いですか?
毛布工廠に持ち込んだままなんで、部屋の買わないと無いんですよ。」
「いいよー。毛布ぐらいなら余裕で乗るっしょー。
さて、そんじゃ気い取り直してしゅっぱ…」


その瞬間、ぶおおおん!と、虚しくエンジンは唸り声を上げた。
北上、ギヤをドライブに入れ忘れる痛恨のミスである。





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