過去ログ - 北上「離さない」
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293: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/09/19(月) 03:32:38.27 ID:E7lzRi1dO

「こんな風にケイちゃんとゆっくり話すの、久々だね。
成人式だもんねー、かっこよくしなきゃね。」
「実家に軽く顏出しゃ充分ですよ。」
「まあまあ、たまにはスーツ着るのも大事だよ。」


ちょきり。

ちょきり。

ちょきり。

微調整を終え。
ハサミは次第に、より多く髪を切って行く。

ケープの溝には、ぱらぱらと切られた髪が落ちていた。


「バリさんとか相当舞い上がってますねー。」
「晴れ着は女の子のロマンだからねー。」
「車キツイからって、今回バスみたいですよ。ご機嫌でチケット押さえてましたわ。」
「ケイちゃんは何で帰るの?」


ぱらり、ぱらり、と切られていた髪はその量を増やし。
今度はバサバサと、より多くの質量を持った髪がケープへと落ちる。

北上は、手元とその毛束を交互に見ながら、ケイとの会話を重ねて行く。


「バスですね。バリさんが一緒に帰ろうよ!って、俺の分も勝手にチケット取ったんですよ。
お陰で帰る日同じになっちゃいましたけどねー。隣同士みたいです。」
「へぇ…………そうなんだ。
じゃ、下地終わり。次やるよ。」


北上は梳き鋏に持ち替え。
毛束を手に取ると、ハサミを横に入れて行く。


そして。


じょぎん、と。
そのハサミは、一際大きな音を立てた。






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