過去ログ - 北上「離さない」
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350: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/10/06(木) 04:59:13.85 ID:FtLTPb5v0


1月11日。


夕張とケイは、帰りは昼の新幹線を取っていた。

バスよりも早く着ける上、特に眠い訳でも無い時刻。
二人は駅弁を食べつつ、堪能する間も無く猛スピードで流れて行く景色を見ていた。

会話は弾む。
しかし行きと少しだけ違うのは、幾分楽しそうに話をするケイの姿だ。

少しずつでも、未来に展望を抱けるようになった彼の姿は。
夕張にとっては嬉しくもあり、そして悲しくもある。


彼の描くそこに、彼女はいないのだから。


やがて夕方手前。慣れた駅に着き、今度は路線バスで鎮守府のそばへと向かう。

冬晴れの空と、遠くから聞こえる波の音。
その静けさは何故か、より切なさを掻き立てるように夕張には感じられた。

正門から敷地へと入ると、真っ先に、いつもこの時間は誰もいない駐車場が二人を出迎える。
ここを越えてしまえば、後はそれぞれの寮へと分かれるだけ。


仕事以外で二人きりでいられる時間は、あとわずかしかなかった。




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